オーストリアのグラーツ工科大学は、バニラビーンズを使ったスイーツの甘い香りの主成分であるバニリンが、液体電池の電解質材料にもなることを発見した。分離および精製プロセスは特許を取得しており、研究成果は化学ジャーナル『Angewandte Chemie』に掲載されている。
研究者らは、液体電解質にオーストリアのバニラクロワッサンの重要な成分であるバニリンを使うことで、生態系に有害な重金属や希土類を含まないレドックスフロー電池を作ることに成功した。これは、環境に優しく持続可能な電力貯蔵技術に向けた重要な一歩になるという。
お菓子の香り付けや香水の原料などに使われているバニリンは、バニラビーンズやアルコールで抽出したバニラエッセンスなどの形で売られているが、木材パルプ製造や製紙工程で出る副生成物のリグニンから合成することもできる。
精製プロセスは大規模化が可能で、連続生産に適しているため、研究者らはこの技術を商用化したいと考えている。論文の責任著者のStefan Spirk教授は、「我々の工場とパルプ工場をつなぎ、廃棄物として残っているリグニンからバニリンを分離する計画を持っている。紙製品の大手メーカーと具体的な話を進めており、この技術に大きな関心を示している」と話している。