3Dだけでなく“2D”にも注目――MOS2単層を載せた光ナノ共振器、照射した光を70%近く吸収

3Dプリンタなど、これまで2Dだったものを3D化する動きがある一方で、エレクトロニクスやフォトニクスの領域では「2D」に注目が集まっているようだ。

2016年4月に科学誌『2D Materials』が掲載した論文「ナノ共振器上のMoS2単層:光物質の相互作用による強化」 によると、酸化アルミニウムとアルミニウムで作った光ナノ共振器(フォトニック結晶)の上に二硫化モリブデン(MoS2)の単層を置いたところ、超薄型半導体材料の吸収する光量を増やす効果があったという。

光ナノ共振器は、複数の鏡を配置して光を極微少な領域に長く強く閉じ込める装置。通信に使用するレーザーや光ファイバー、さらには光を用いた量子演算に利用できる可能性があると期待されている。

今回、MoS2単層を活用した光ナノ共振器の開発に携わった米バッファロー大学のQiaoqiang Gan助教によると、「太陽光パネルの効率性や適応性を向上させて、ビデオカメラなどに組み込む光検出器を高速化できる可能性がある」という。さらに同共振器を活用して水を分離する効率を上げることで、液体水素燃料の生産にも利用できるかもしれないとしている。

「2D」の素材としてはグラフェンも脚光を浴びているが、MoS2単層はバンドギャップがLEDやレーザー、太陽電池に使われる半導体と似ているところに利点がある。潤滑剤や合金鋼にMoS2は広く利用されるようになっているが、オプトエレクトロニクス関連の研究はまだ途上だ。

照射したレーザーの70%近くを吸収。太陽光発電の効率向上につながる可能性

Gan助教とともに論文執筆にかかわったHaomin Song氏は、「実験の結果、光ナノ共振器は照射したレーザーの70%近くを吸収できた。これだけの光吸収能力と吸収した光をエネルギーに変換する能力を生かすことで、産業界はエネルギー効率に優れた電子機器を継続的に製造できるようになるかもしれない」と述べている。

産業界ではこれまで、半導体の小型化などを進めることで、光電子装置の小型化・薄型化・高性能化を実現してきた。けれど、太陽光発電などに使う光電子装置においては、超薄型半導体が従来の半導体ほど光を吸収しないことが課題となっている。今回開発されたMoS単層を利用する光ナノ共振器は、こうした課題の解決策になる可能性があるという。

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This “nanocavity” may improve ultrathin solar panels, video cameras and other optoelectronic devices

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