最大約10kWh超のリチウムイオン電池を備えた廃熱発電システムを構築――電力喪失時でも発電可能 馬渕工業所ら

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2024年3月19日、馬渕工業所、東京大学、宮城県産業技術総合センター、京都大学およびイーグル工業が、最大約10kWh超のリチウムイオン電池を備えた廃熱発電システムを構築したと発表した。

地熱や温泉熱、産業系廃熱などを活用した有機ランキンサイクル(ORC)発電システムが、近年注目されている。

今回開発したシステムは、系統連系が不要なオフグリッド型だ。蓄電制御ユニットおよびランキンサイクルユニットが、最適化した制御システムにより自立運転可能となっており、商用電源が失われた状況下でも、発電電力を利活用できる。

ランキンサイクルユニットに80℃以上の温水を流すことで、4kW以上を発電する定格運転が可能。また、60℃程度の低温水でも2kW以上を発電し、蓄電制御ユニットのリチウムイオン電池に対して安定的に充放電できることを確認した。

軸トルク制御を最適化した制御システムや、非対称ラップ構造のスクロール式膨張機などの高性能化が、今回のシステム開発に寄与している。

今回構築した制御システムの動作を確認すべく、馬渕工業所のボイラーの熱を仮想廃熱として試験を実施。廃温水温度90℃以上で発電出力が5kW以上、ユーザー使用電力が約4kW以上となった。また、廃温水温度80℃以上では発電出力が4kW以上、ユーザー使用電力が約3kW以上となっている。

加えて、鈴木工業の産業廃棄物処理施設「エコミュージアム21」で実際の廃熱を用いた実証実験も実施した。廃温水温度50〜60℃で発電出力が1〜1.5kW以上、ユーザー使用電力が0.5〜1kW以上となっている。

(左)鈴木工業のエコミュージアム21に設置したORC発電システム
(右)廃温水採取位置

馬渕工業所は、2023年3月に終了したNEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の実用化フェーズにて、工場の未利用廃熱の活用策として要素技術を開発した。

今回の研究開発は、2023年7月に採択されたNEDOの「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」の一環として進めている。

馬渕工業所は今後、京都大学、イーグル工業の協力のもとに膨張機摺動部を改善し、高効率で耐久性、信頼性に優れるORC発電システムの製品開発を進める。

また、2025年度の「独立型ORC発電システム(5kW級)」の事業化に向けて、2024年度に熱源別の廃熱所有事業所にて社会実装による実証実験機を5台程度稼働させ、製品化に向けた開発を進める。

関連情報

世界最高の発電効率を誇る廃熱発電システムのオフグリッド化を実現 | ニュース | NEDO

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