ディスコ、SiCインゴットからウェーハをレーザーで切り出す新手法を確立

ディスコは2016年8月8日、レーザ加工によるインゴットスライス手法「KABRA」プロセスを開発したと発表した。同プロセスを導入すれば、次世代パワーデバイス素材として期待される炭化ケイ素(SiC)ウェーハ生産の高速化、取り枚数増を実現し、生産性を劇的に向上させられるという。

従来、SiCインゴットからウェーハを切り出す方法は、ダイヤモンドワイヤソーでの加工が主流だった。しかし、SiCは硬質であるため加工に時間がかかる上に、切断部分の素材ロスが多くインゴット1本あたりの取り枚数が少ないため、ウェーハ量産のためには多数台のワイヤソーが必要とされた。

そこでディスコは今回、SiCインゴットの上面からレーザーを連続的に垂直照射することで、光吸収する分離層(KABRA層)を任意の深さへ扁平状に形成し、このKABRA層を起点に剥離・ウェーハ化するという新手法を開発した。

レーザー照射により形成される改質痕は原理的に入射方向(縦長)に伸びるため、従来のレーザー加工法はスライス用途に不向きとされていた。しかし同社は、集光されたレーザーによりSiCが分解されるとアモルファス状態のシリコン(Si)とカーボン(C)に分離することに加え、アモルファスカーボンの光吸収係数がSiCの約10万倍であることに着目して開発を進めた。

その結果、インゴット内部に対しレーザー入射方向と垂直方向にKABRA層を形成することに成功し、スライス加工に最適なレーザー加工法であるKABRAプロセスを見出した。なお、同プロセスは単結晶(4H・6H・半絶縁性)および多結晶のあらゆるSiCインゴットに適用でき、単結晶ではそのオフ角を問わない。

従来、φ4インチSiCインゴットからウェーハを切り出すまでの加工時間は、1枚当たり2時間前後(1インゴット当たり2~3日)だった。だが、KABRAプロセスでは加工時間を1枚当たり25分(1インゴット当たり約18時間)へと大幅に短縮できる。また、φ6インチの場合も、既存プロセスで1枚当たり3時間強だった加工時間を約30分に短縮可能だ。

ワイヤ加工の場合は、ウェーハ表面に生じる50µm程度のうねりを除去するためのラップ研削が必要だった。一方KABRAプロセスでは、剥離後のウェーハのうねりを抑制できるため、ラップ研削は不要。また、ワイヤ加工では切断部分の素材ロス(カーフロス)がウェーハ1枚当たり200µm程度あったが、KABRAプロセスでは切断時点での素材ロスはない。また、剥離後のKABRA層の除去分を100µm程度に抑えられるため、インゴット1本当たりのウェーハ取り枚数は従来比約1.5倍となる。

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