銀ではなく銅インクで――産総研、銅インク印刷技術を改良してラジオ内蔵野球帽を試作

産業技術総合研究所(産総研)は2017年6月2日、銅インクを用いて配線したフレキシブルなラジオをツバの部分に組み込んだ野球帽を試作したと発表した。

近年、低コスト・省資源で電子デバイスを製造できるプリンテッド・エレクトロニクスに注目が集まっている。しかし、印刷に利用する素材としては銀が多く、コストがかかる上にマイグレーションによる短絡が発生しやすいといった問題がある。銀の代わりに銅を配線に利用する技術の開発が望まれているが、印刷された銅を焼成して低電気抵抗の配線を得るプロセスは確立されていないという。

そこでこれまでに産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センターは、極低酸素状態で純銅を作り、大気圧プラズマの作用により銅粒子を焼結する低温プラズマ焼結法(CPS法)を開発。インクジェット印刷用の銅ナノ粒子インクの焼結を確認していた。

CPS法の概要(左)と改良型電極を用いた低温プラズマ焼結時における密閉容器内の様子(右)

CPS法の概要(左)と改良型電極を用いた低温プラズマ焼結時における密閉容器内の様子(右)

今回、同研究センターは量産に用いることが可能なスクリーン印刷用銅ペーストも焼結できるように、プラズマ生成用の電極や電源などを改良。また、今まで使用していたポリイミドフィルムだけでなく、安価なポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムへの印刷と焼結を可能にした。

野球帽に内蔵したフレキシブルラジオは、45mm角以内になるよう小型化し、厚さは1.8mm以下に抑えた。ラジオのアンテナはツバの布地に縫い込んであり、ラジオ放送を安定して受信できる。帽子のツバを曲げても受信には支障がなく、かぶったまま電源のオン・オフやボリューム調整、選局が可能だ。

今後は、CPS法を高速化して製造プロセスの生産性を向上させて、3年後には量産化への目処を付ける方針だ。また、印刷でのフレキシブル配線板の量産技術を確立して多品種化を容易にする考えも示している。

試作した野球帽と使用した技術の詳細は、6月7~9日に東京ビッグサイトで開催される「第47回国際電子回路産業展(JPCA Show 2017)」で展示される。

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