未踏の一桁ナノメートルサイズでも熱安定性と電流誘起磁化反転を両立――東北大、磁気トンネル接合素子の新方式を提案

東北大学は2018年2月15日、不揮発性磁気メモリ(STT-MRAM)の主要構成要素である磁気トンネル接合素子の新しい方式を提案し、一桁ナノメートルサイズでの動作実証に成功したと発表した。この技術は、微細化された将来の半導体集積回路にも適用可能で、現行の約100倍となる100ギガビットクラス以上の大容量ワーキングメモリの実現や、IoT技術への貢献が期待できるとしている。

現在、電子機器で用いられているストレージメモリは、電源を切っても情報を保持する「不揮発性」を有するのに対して、ワーキングメモリは情報を保持するためには、電源を維持し続ける必要があり、この揮発性による待機時消費電力が半導体集積回路技術の懸案となっている。加えて、現在のワーキングメモリでは、構成素子の微細化の物理限界、製造限界も深刻な課題となっている。

STT-MRAMは、現在開発されている不揮発性メモリの中で唯一、動作速度や繰り返し動作耐性において、現行のワーキングメモリと同等の高い性能を達成できる性質を有していることから、超低消費電力高性能ワーキングメモリとしての実用化が期待されている。2018年内には本格的な量産化が始まる見通しだが、今後大容量化・高性能化を進めていく上では、その構成要素である磁気トンネル接合素子の微細化が不可欠となる。

2010年に同グループは「界面磁気異方性」を利用する磁気トンネル接合を開発し、直径20ナノメートルまでの微細化技術を確立したが、サイズが20ナノメートルよりも小さくなると、情報の忘れにくさ(熱安定性)と書き換えやすさ(電流誘起磁化反転)という2つの要件の両立が難しく、抜本的に新しいアプローチが求められていた。

今回、同研究グループはこれまで有効に活用されてこなかった「形状磁気異方性」に着目した。形状磁気異方性とは、磁石の形状に応じて磁化(N/S)の向きやすい方向が決まる性質のこと。この性質を積極活用する新しい磁気トンネル接合素子を提案し、1桁ナノメートル台でも十分な熱安定性と電流誘起磁化反転を実現する素子の動作実証に成功した。作製した素子の最小サイズは3.8ナノメートルで、これまでの研究と比べて群を抜いて小さいサイズだという。

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