東京大学は2017年10月17日、パソコンやスマートフォンに標準搭載されているWebブラウザ上で、ディープニューラルネットワーク(DNN)を高速に実行できるソフトウェアフレームワーク「WebDNN」を開発したと発表した。
DNNは、画像や音声の認識/生成に有効な手法として近年注目されているAIの一形態だ。しかし計算負荷が高いために、従来はWebサービスに組み込む際にユーザー数に応じた大量の計算機環境を用意するか、専用アプリケーションを開発してユーザー側の端末にインストールする必要があり、その分のコストや手間が掛かるという課題があった。
今回の開発したWebDNNは、DNNをWebブラウザ上で高速で実行することを可能にするものだ。具体的には、例えば事前に処理可能な計算を予め処理しておくなど、実行結果が変化しない範囲で計算を最適化することにより計算量を削減して、計算時間やデータダウンロード時間の短縮を図っている。また、WebGPUやWebAssemblyなどのWebブラウザに搭載されている最新規格に対応し、それらを活用することで高速化を実現したり端末の性能を最大限引き出したりすることが可能になった。
実際に画像認識DNNなどを実行させて従来のソフトウエアと処理速度の比較を行ったところ、WebDNNは他のソフトウエアの約50倍の速度で計算を行うことができた。
WebDNNを用いることで、DNNを用いたWebサービスを低コストかつ容易に提供できるようになる。また、ユーザーの端末内で処理を行うので処理対象となる写真などのデータを送信する必要がなくなり、セキュリティ面も強化される。
今回の開発によりWebブラウザ上でDNNが高速に実行できるようになったことで、人工知能研究のデモンストレーションやユーザーがカメラで撮影した画像を処理するサービスなどの開発が促進されることが期待されるという。
同大学では、今後さらなる高速化やデータダウンロード時間の短縮、利用可能なDNNの種類の増加を進める考えだ。