- 2017-10-26
- IT, ソフトウェア
- eセールスマネージャー, Sales Force Automation, SFA, エンジニアキャリア紹介, ソフトブレーン, パッケージソフトウェア, 小田健太
営業活動と業務を効率化する営業支援システム(SFA:Sales Force Automation)で、国内トップシェアの「eセールスマネージャー」を提供するソフトブレーン。小田健太さんは、開発本部長であり、執行役員として技術部門のトップを務める。経営的な視野で先を見る立場になっても、「ユーザーのメリット」を追求し、ものづくりにワクワクするエンジニアであることに変わりはない。(執筆:杉本恭子 撮影:水戸秀一)
印象に残る幻のプロジェクト
――現在のお立場と、仕事の内容を教えてください。
今年、執行役員に就任し、パッケージ製品を開発したり機能改修をする「製品開発部」と、パッケージをカスタマイズする「システム開発部」をまとめる技術部門の代表として、すべての開発を管掌しています。
開発実務として担当しているのは、企画や各種プロダクトの方針決めやレビュー、他社との協業スキーム作りなどです。
――これまで、主力製品であるSFA「eセールスマネージャー」の開発に主に携わっておられますが、特に印象に残っているプロジェクトは。
「ビジネスクロス」というシステム開発のプロジェクトですね。
私が入社した2006年当時、eセールスマネージャーは営業部門だけが使うシステムでした。それに対し、ビジネスクロスは部門横断型のシステムで、「eセールスマネージャーの次はこれで行く!」という肝いりのプロジェクト。当時流行りだったAjaxの技術を使ったり、新しいフレームワークを搭載したりと考え方も仕組みもとても洗練されたものでした。夜遅くまで開発したり、時には休日も仕事に費やしながら、何とか良いものをはやく作りたいという想いでやっていました。
でも結局、この事業は道半ばで打ち切りとなりました。だから余計に、印象に残っているのだと思います。
考え方や機能は洗練されていたものの、当時のサーバースペックではパフォーマンスが悪かったのです。現在のサーバーで動かしてみたら非常に速い。企画した時期が早過ぎたのかなと私は思っています。
お客様と直に接したことが役立っている
――チャンスがあったら、もう1度ビジネスクロスを復活させたいですか。
実は、ビジネスクロスのプロジェクトで培ったことが、eセールスマネージャーの後継版「eセールスマネージャー Remix Cloud」(以下、Remix)に生かされているのです。
Remixは、これからを担うはずだったビジネスクロスがなくなり、既存製品をどう進化させるかという時に、私が提案した企画が認められて製品化されたものです。今は、Remixをもっと良くしていきたいと思っています。
ビジネスクロスの経験が生かされているのは、製品開発だけではありません。Remixの開発中は、機会があるたびに各部門長にプロジェクトのことを説明し、プロジェクトがうまく進むように合意形成にも努めました。本来、一開発者の仕事ではないかもしれませんが、こういう動きができたのもビジネスクロスで積んだ経験のおかげですね。
――コンサルタントのご経験もあるそうですね。
はい。3年ほど前から1年半くらい、eセールスマネージャーのお客様の課題に対する解決策や、現場に合わせた運用の仕方を提案したりしました。
お客様の声をダイレクトに聞くことができましたし、ユーザーの視点や、顕在化している課題に対してどう対応すると喜ばれるかなど、多くのノウハウを蓄積することができました。この経験も、今の製品開発やカスタマイズにとても役立っています。
パイロットになりたかったけれど……
――小田さんは、大学で情報システム工学を専攻していたそうですね。
本当は、小さいころから戦闘機のパイロットになりたいと思っていました。
自衛隊には、パイロットを養成する「航空学生」という、倍率がとても高い最短エリートコースがあります。そこを受験して筆記試験は合格したのですが、身体検査の視力検査で不合格になってしまいました。民間機のパイロットであれば、眼鏡や手術で矯正していても操縦可能なのですが、戦闘機パイロットは一切認められません。
中学生の時に、父がパソコンを買ってきたのですが、それがおもしろくて触っているうちに、視力が悪くなってしまっていたのです。戦闘機のパイロットには一生なれないことが決まってしまったので、パイロットは諦めて大学に進学することにし、パソコンが好きだったので情報系の学科を選びました。
――システム開発の仕事は、2番目の選択肢だったのですね。
そうですね。でも思い返してみると、子どものころからものづくりは好きでしたね。
飛行機のプラモデルを作ったり、遊ぶものもダンボールを使って手作りしたり。パソコンでプログラミングして「作る」ということは性に合っていましたし、高校生の時からホームページを作ったりしていたので、パソコンは身近な存在でした。
給料のための仕事ではおもしろくない
――仕事をする上で、影響を受けた人は。
ビジネスクロスのプロジェクトで上司だった方です。「仕事は、給料をもらうためにやっているとおもしろくない。『いかに稼ぐか』という思考をすると、『ビジネスにつなげる』という観点でものづくりができる。黙々と何でも作ればいいというものではない」と話してくれました。そういう考え方は、当時の私には新鮮でしたし、今も心に残っています。
――今年から執行役員に就任されましたが、自分自身に変化はありましたか。
経営視点がより強くなったと思います。
部長という立場だけの時は、やはり部のことを中心に考えていました。今は、セクショナリズムは排除して、「ソフトブレーンとしてどうなのか」という考え方がより強くなりました。また競合他社とか市場といった社外に目を向けることも多くなっています。経営的な視点で考えるのはおもしろいですし、結果的に製品にもフィードバックすることができます。
一方でエンジニアとして、経営的な視点で考えながらも開発現場のことも想像してしまうので、「現場にどう展開するか、どうやって実装するか」と具体的な計画にまで落とし込んで考える習慣が身についていると感じることもあります。また常に「次はどうするか」を考えて進める必要があるのですが、それも楽しく、とてもやりがいがあります。
ただ、1人のエンジニアとしては、製品を開発していて直面した課題を乗り越えたり、ようやく製品が完成してリリースしたりする瞬間の達成感を第一線で味わえなくなりました。そんなところには、少しさびしさを感じていますね。
営業活動の泥臭い部分を助けたい
――がんばれる原動力になっているものは。
1つは、子どものころから好きだったものづくりのワクワク感を、仕事で味わえること。今プラモデルを作っている時間はありませんが、その楽しみを製品開発に注ぎ込んでいる感じです。
もう1つは業界にも恵まれていることです。営業活動は必ずビジネスについて回るもの。営業スタイルが変化したり、システムの仕組みが新しくなったりしても、営業を支援するというこの仕事は絶対になくならない。それを追求し続けていくのはおもしろいですね。
――今後はどのようなことをしたいですか。
eセールスマネージャーは、使いやすさを追求してきました。今年5月には、第三者の調査で「使い勝手No.1」の評価をいただき、ようやく体現できてきたと思っています。
しかし、まだまだこの市場は大手企業が中心なので、今後はもっと中小規模の企業にも広げたいですね。そのために、製品自体の使い勝手を良くするだけでなく、Webサイトで課題を解決したり、運用方法や便利な使い方を学んだりできるように、情報提供の仕組みも充実させ、より一層使い勝手の良いサービスを提供したいと思っています。
また営業という仕事には、アポの日程調整や、見積書の作成、上層部へのレポートなど、意外と泥臭い作業もいろいろあります。SFAやCRMは現場にとってメリットがあることが重要なので、AIを活用するなどして、営業マンの作業を肩代わりできるような仕組みも作れるのではないかとアイデアを膨らませているところです。
フォロワーシップを発揮できることが重要
――エンジニアには、どんな素質が必要だと思いますか。
絶対に必要だと思うのは、ものづくりが好きであることですね。もう1つは、新しい技術や業界のトレンド技術に敏感であることだと思います。
――それは貴社が採用したいエンジニア像でもありますか。
そうですね。職種としては、「プロジェクトを円滑に回して、予定どおりに高品質の製品をリリースする」というプロジェクトのマネージメントができる人も必要です。新しい技術に挑戦するときや、技術的な課題を解決するときには、スペシャリストとして技術を極める人も必要です。
ただ、どの職種にも当てはまるのは、常に顧客基点に立ち、「お客様は何を求めているのか」を考えること。加えて、チームプレイを重視し、常に「プロジェクトを成功させるために自分ができることは何か」という視点を持った上でフォロワーシップを発揮することが重要だと思っています。いくら高い技術があっても、市場に訴求できるものをスピーディーに提供できなければもったいないですよね。
エンジニアとして、いずれのキャリアを積んでいくことも、弊社では実現可能ですし、そういったエンジニアと一緒に成長したいと思っています。