高耐久性の非金属型有機高分子系酸素還元反応触媒を開発 北陸先端科学技術大学院大学

DFT計算によるBIAN系高分子の最適化構造と電荷分布

北陸先端科学技術大学院大学は2018年3月19日、高い電気化学的耐久性を持つ非金属型有機高分子系の酸素還元反応触媒を開発したと発表した。今回開発したのはビスアセナフテンキノンジイミン(BIAN)骨格を有する新規π-共役系高分子だ。

酸素還元反応は燃料電池やリチウム-空気電池のデバイス作動における律速段階として知られており、その反応の効率によってデバイスの性能が左右される。

現在まで、非金属系の酸素還元反応触媒としては、窒素やリン、硫黄、ホウ素などのヘテロ元素をドープした炭素系材料が検討されてきた。しかしこれらの材料は作製に高温処理などが必要な場合が多い他、作製された材料におけるヘテロ元素の環境が一様でなく、どのような環境のヘテロ元素が実際の酸素還元反応触媒に関与しているのか解明されていないなどの課題があった。

今回の研究では、極めて明確な構造を持つ有機高分子を、グラフェンオキシドとマトリックス形成させ、400℃という高分子の分解温度以下の低温でカソード電極を作製した。

今回作製した材料は、アルカリ水溶液中やリチウム塩溶存下のグライム系溶媒中で顕著な酸素還元反応触媒活性を示した。また、サイクリックボルタンメトリーによる応答電流の測定では1000回の電気化学サイクルを経てもピーク強度が安定的に観測され、すぐれた電気化学的安定性を示した。

今回の研究の結果を受け、今後合成手法のバリエーションによるさらなる構造制御などが可能になると考えられる。また、燃料電池やリチウム-空気電池用カソード電極材料としての展開が期待されるという。

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