実験室で培養された「豆サイズの脳」から脳波を検出

Credit: Muotri Lab/UC San Diego

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、幹細胞から作り、研究室で培養した「ミニ脳」が、ヒトの脳波に似た信号を出していることを発見した。

UCSDの神経科学者Alysson Muotri博士率いる研究チームは、神経ネットワークの形成を明らかにするため、認知をコントロールし、感覚の情報を解釈する脳の領域である脳皮質の組織、脳オルガノイドを作った。オルガノイドは、iPS細胞などの幹細胞から、実験室等で人為的に作られた臓器のことだ。神経領域では、大脳、小脳、海馬などが作られている。研究チームは脳オルガノイドを培養しながら微小電極アレイ(MEA)を使って脳神経回路の活動を測定していたところ、4~6カ月経過すると、ミニ脳から同期した信号の活発な発振が検出された。

詳しく調べると、培養6週目では神経細胞は同期せず、離散的かつ無秩序に信号を発していたが、2カ月目から信号は同期し始め、25週目からは早生児の脳波(EEG)に似た信号を出す。これにより、信号によって培養の期間を知ることができ、早期の脳の発達の研究に役立てることができるという。

しかしながら、意識を持つ臓器のミニチュアを開発する技術は、倫理的な問題も提起する。UCSD科学技術倫理センター長のMichael Kalichman博士は、「これらは自我や感覚といったものにはほど遠いが、研究は更に押し進められる計画だ。多くの人が苦しんでいる神経疾患を解明するために大変重要な研究だ。とはいえ、全ての手段が容認できるわけではない」と、警鐘を鳴らす。

Muotri博士は、「脳オルガノイドは、今はまだ原始的なものだが、もし自己を認識しているという証拠が見つかれば、プロジェクトの停止も検討する」と、慎重な姿勢を示している。

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Lab-grown ‘mini brains’ produce electrical patterns that resemble those of premature babies

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