- 2018-4-10
- 化学・素材系, 自動車, 転職・キャリアアップ
- アルミ合金, マグネシウム合金, 化学系エンジニア, 機械系エンジニア, 炭素繊維強化樹脂(CFRP)
~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・甲斐 由美氏への取材記事です。自動車業界の技術やキャリアのトレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性など、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。
今回から自動車業界における化学系エンジニアの動向について、ご紹介していきます。(執筆:中嶋嘉祐)
――自動車業界と言えば、「機械系エンジニアが主役」というイメージを強く持っていました。化学系エンジニアはどのような形で、自動車開発に関わってくるのでしょうか。
[メイテックネクスト 甲斐 由美氏]化学専攻の学生のほとんどは、自動車業界が化学系エンジニアを求めていることをまったく知らずに就職活動していると思います。そのまま化学メーカーに就職するのが一般的で、「自動車業界にも化学系エンジニアの仕事がある」と言われても上手くイメージできないでしょう。
しかし、機械・電気系より採用数は少ないものの、自動車業界は化学系のエンジニアを新卒でも中途でもずっと採用しています。実は、自動車にはさまざまな素材が用いられていまして、多様な側面で化学系エンジニアの専門性が求められているのです。
具体的な分野としては、高分子寄りの研究をしてきた人材や、有機・無機・複合材に詳しい人材は自動車業界で活躍できる可能性が十分にあります。
例えば内装で言えば、高級感のある見た目にするために高外観の素材を材料メーカーに供給してもらうのですが、最初から意図したとおりの見た目になることなんてまずありません。最初に届いた素材にどのように手を加えていけば意図したとおりの見た目になるのか、完成車メーカー側の化学系エンジニアも意見を出しながら一緒に考えていく必要があるのです。
特に内装品や外装品など、樹脂が絡む部分では、製品開発の段階から化学系エンジニアの力が必要とされています。中でも高分子系に詳しい化学系エンジニアは人気で、売り手市場ですね。
CFRPなど、複合材に詳しい化学系エンジニアがこれから人気に
――「高分子系が人気」ということですが、これから人気が出てきそうなのは、どんな専門性を持つ人材だと考えられますか?
[甲斐氏]材料の複合化、特に樹脂との複合化の技術に詳しい人材でしょう。複合材料は今後より本格的に自動車業界で使われるようになり、市場が拡大していくはずです。
例えば、炭素繊維と樹脂を複合化した炭素繊維強化樹脂(CFRP)が自動車にも使われるようになってきました。日本では強度の高い金属代替材料が中心で、まだCFRPの導入は進んでいませんが、欧州の高級車などでは車体骨格にもかなりCFRPを使うようになっています。
また、日本メーカーは主に鋼板を使っていますが、欧州メーカーはアルミ合金やマグネシウム合金など、新しい素材をどんどん取り入れています。この先、日本メーカーも新しい素材を試す必要が出てくるでしょう。
実際にこのところ、国内の完成車メーカーや自動車部品メーカーが、異種材を十分な強度を持たせて接合する技術を求めるようになり、ピンポイントでそうした分野に詳しい人材を募集するようになってきています。すでにCFRPなどの複合材を本格的に導入するための研究が進んでいると考えられます。
ただし現在の日本では、CFRPなどの複合材による軽量化を提案しているのは、主に化学メーカーです。自動車関連の業務に就く化学系エンジニアの採用人数も、完成車メーカーより化学メーカーが多い状態です。
逆に、複合化や樹脂化が進むことで、今後は金属に詳しい化学系エンジニアのニーズが減る可能性はあります。しかし、剛性、生産安定性、コストなどを考えると、すべての金属が樹脂に変わることはありません。強度の問題を考えても、重さを度外視してでも、金属から変えられない部品はあります。
そのため、金属を専門とする化学系エンジニアであっても、完成車メーカーに入って当面は金属を軸としつつ、新しい素材にも触れながらエンジニアとしての幅を広げていくことは可能です。先ほど申し上げた「どうしても金属から変えられない部品」を作っている部品メーカーに入社するのも、先々のことを考えると有力な選択肢の1つになるでしょう。
とはいえ金属工学の研究室は、今では日本にごくわずかしかありません。金属に詳しい化学系エンジニアは貴重な人材ですから、たとえ自動車業界でのパイが小さくなっても、受け皿は他業界にまだまだたくさんあると思います。
甲斐 由美(メイテックネクスト 化学・素材・バイオ分野 コンサルタント)
<メッセージ>
私はこれまで、企業での人事を中心に、マーケティングや会社の立ち上げなど、さまざまな仕事を経験し、多くのエンジニアの方と接してきました。
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同じく転職を経験している者として、また人事として数百人の採用、育成に携わってきたアドバイザーとして、ぜひ貴方の未来をお手伝いさせてください。 ご連絡、おまちしております。