名古屋大学は2018年5月18日、従来常温下では可塑性が小さいために脆く壊れやすいと考えられてきた半導体結晶が、光のない環境で大きな可塑性を示して壊れにくくなる現象を発見、同時にそのメカニズムも解明したことを発表した。
光環境が半導体材料の電気的特性に影響することは従来から知られていたが、機械的特性に関してはこれまでほとんど理解されていなかった。今回の研究では、無機半導体の1つである硫化亜鉛の結晶について、常温での変形挙動を調べた。その結果、光のある環境下では従来どおりの脆い性質を示した。しかし、完全な暗室下では、結晶の特定方向に沿ったずれが連続的に起きることで発生するすべり変形によって、壊れにくい性質を示すことを発見した。
これは結晶内部に存在する転位(原子配列の連続性の乱れの一種)の電子構造が原因で、特定の転位が光の照射に誘発された電子やホール(正孔)と強く相互作用して不動状態となるために、変形メカニズムに違いが生じると考えられるという。
同様の現象は他の多くの物質や材料でも発生すると予想され、物質や材料の変形、破壊メカニズムを電子構造の観点から再考することが必要になるという。また同研究によって、半導体材料やセラミックス材料などの脆い材料の製造技術や利用法、塑性加工技術の進歩が期待されるとしている。