- 2024-3-13
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- CT, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, PET, Qammer H. Abbasi, X線, がん細胞識別法, アルツハイマー病, グラスゴー大学, テラヘルツ波, バイオセンサー, ロンドン大学クイーン・メアリー校, 基底細胞がん(BCC)細胞, 学術, 生物学的センシング, 皮膚がん
皮膚がんを高い感度で検出できる、テラヘルツ波を利用したバイオセンサーが開発された。ロンドン大学クイーン・メアリー校とグラスゴー大学との共同研究による成果は、がんの早期発見に大きな進歩をもたらす可能性がある。研究成果は『IEEE Transactions on Biomedical Engineering』誌に2024年2月9日付で公開されている。
テラヘルツ波とは、電波と光の中間の周波数帯にある電磁波だ。X線などと比べてエネルギーが低いため人体に安全という特徴を持つ。生物学的センシングに有望ではあるものの、テラヘルツ波によるがん細胞識別法は、これまであまり研究されていない。
研究チームが開発したバイオセンサーは、テラヘルツ波を利用して細胞特性のわずかな変化を検出することで、非侵襲的に正常細胞とがん細胞を識別する。感度向上の鍵となるのは、フレキシブルな超薄型基板上に非対称共振器を搭載した、テラヘルツメタサーフェスだ。
テラヘルツ波を利用した従来の腫瘍識別技術は、屈折率のみに依存していた。しかし、今回の画期的な手法では、共振周波数、透過率の大きさ、半値全幅(FWHM)と呼ばれるパラメーターを組み合わせて分析する。この総合的なアプローチにより、詳細な組織の画像が得られ、正常細胞とがん細胞をより正確に識別できる。組織の悪性度も測定可能だ。有効性を検討した試験では、正常な皮膚細胞と基底細胞がん(BCC)細胞を識別することに成功した。
皮膚がんを検出する従来の方法では、高価で時間を要するCTやPET、侵襲的な高周波技術を使うことが多い。グラスゴー大学のQammer H. Abbasi教授は、「フレキシブルで持ち運びができる再利用可能なセンサーに、テラヘルツ波イメージング技術を統合することで、より迅速で快適ながん検診を実現できる」と述べている。
さらに、この技術は皮膚がんの検出だけでなく、他のがんやアルツハイマー病などの疾患の早期発見に利用できる可能性がある。また、可搬性と比較的安価であることから、資源が限られた環境での応用も期待される。