有機系強誘電体プライザッハモデルの実体を観測――円筒状ナノ構造がヒステリシスを示す

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様々なサイズと周囲環境を持つヒステロンの集合体が、現実の分極ヒステリシスを生成する。

スウェーデンのリンショーピング大学(LiU)とアイントホーフェン工科大学の研究チームが、有機系強誘電体の分極ヒステリシスの物理モデルの実体解明に成功した。幾つかの分子の積層により生成される円筒状集団が、プライザッハモデルで説明される様々なサイズの磁気双極子を形成し、外部電場の変化に対応して幅を持った分極ヒステリシスを示すことを確認したものだ。研究成果は2018年10月23日の『Nature Communications』誌に公開されている。

鉄やコバルト等の強磁性材料では、電子スピンが小さな磁石として機能し、N極とS極を持つ双極子になっている。それと同様に強誘電性材料では、分子が電気的に正と負に分極して磁気双極子を構成する。外部電場がない場合、磁気双極子の方向はランダムになっているが、特定の臨界電場が印加されると、双極子は電場方向に整列する。電場が取り除かれても、この整列は残留して分極状態が保持されるというヒステリシス(履歴効果)を示す。反対方向の臨界電場を印加すると分極は反転できるため、強誘電体を使った高速高密度不揮発性メモリーが研究されている。

この強誘電性材料が持つヒステリシスは、1935年にFranz Preisachにより単純化された物理モデル「プライザッハモデル」などで説明されている。プライザッハモデルは、強誘電材料を「ヒステロン」と呼ぶ小さな独立した多数の磁気双極子の集合体として考える。理想的なヒステロンであれば特定の臨界電場に達すると正確に極性が反転するはずだが、現実の強誘電性材料では、幅を持った臨界電場で反転現象が生じる。この不均一性を材料因子と結び付けて理解することが、高性能メモリーへの応用には重要となる。

今回研究チームは、2種類の有機系強誘電性薄膜を用いて、ヒステロンの物理的実体の解明を試みた。有機系強誘電性材料の分子は互いの上に重なる傾向があり、サイズがナノメートルレベルの円筒状の積層を構成する。この積層は様々なサイズを持つとともに、双極子として互いに強く相互作用するが、その程度は各積層の周囲環境によって異なるので、分極ヒステリシスに不均一性を生じることを確認した。そして強誘電性材料における反転スイッチング挙動が、ナノ構造に強く依存することを示し、解析したナノ構造から、ヒステリシス曲線の形状を予測することができたという。

LiU先進材料デバイス学科のMartijn Kemerink教授は、「本研究では、2種類の有機系強誘電性材料を使ってヒステロンの実体について示したが、これは一般的な強誘電性材料にも展開できる。この研究成果は強誘電体を使ったメモリーの材料設計指針となり、マルチビットメモリーを含む小型で柔軟な次世代メモリー開発への道を切り拓くものだ」と、今後への期待を表している。

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