グラフェンに厚さ数nmの高誘電率絶縁体を埋め込む――次世代フレキシブルデバイスを実現する技術

イギリスのエクセター大学の研究チームは、レーザー照射を利用して、ファンデルワールスヘテロ構造内部に高誘電率(high-k)絶縁体を埋め込むことに成功したと発表した。次世代のフレキシブル電子部品の製造につながると期待される。研究成果は、2019年1月18日付けの『Science Advances』に掲載されている。

ファンデルワールス構造とは、グラフェンに代表されるように、原子層同士が弱いファンデルワールス力によって結合した構造だ。異なる原子層同士が積層したヘテロ構造は、将来のナノ電子デバイスにおいて重要な役割を果たすと注目されている。しかし、製造方法の複雑さが実用化への道を険しくしている。

また現在のデバイスには、小型化に伴い絶縁体の厚みが薄くなると、リーク電流が増加し性能を劣化させるという問題がある。その対策として、近年ではhigh-k絶縁体を使用するが、ファンデルワールスヘテロ構造に組み込まれた例は、これまでなかったという。

「この方法を利用すると、近傍の2次元材料の特性を損なうことなく、様々なファンデルワールスヘテロ構造にレーザーを使ってhigh-k絶縁体を埋め込むことができる」と、研究チームは語る。レーザーによる書き込み技術の容易さから、従来のスパッタリングや原子層堆積法(ALD)に置き換わる可能性もある。

今回開発した手法では、剥離法で作製したグラフェンの上にHfS2層、MoS2層を転写して、ファンデルワールスヘテロ構造を形成する。そこにリソグラフィ技術を利用してCr/Au電極を付加する。その上からレーザーを照射すると、HfS2層のみが光酸化反応により、k~15の高誘電率を持つHfOxに変換した。

真空中と大気中でのレーザー照射結果の違いから、この光酸化反応は大気中の水または酸素によって引き起こされると考えられる。また、HfS2がほかの2次元材料に挟まれている場合でも、周りの構造に損傷を与えることなく酸化プロセスは進んでいた。

研究チームは例として、動作電圧~1VのReRAM(抵抗変化メモリ)を作製している。ReRAMは近年、速度、耐久性、デバイス密度といった点で性能が上がってきており、さらに2次元材料を使ったものは柔軟、低消費電力、高密度のメモリデバイスとして注目されている。

そのほか、柔軟性が高く何度曲げても性能が劣化しないTMDC-FETs(電界効果トランジスタ)、典型的な平面型光検出器と比べて10の6乗も応答時間の速い光電デバイスなどを作製した。

研究チームは「この技術は、電界効果トランジスタ、メモリー、フォトディテクター、LEDといった、1~2Vレンジで動作するフレキシブルデバイスの実用化を可能にするだろう」と、期待している。

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Innovative new technique could pave the way for new generation of flexible electronic components

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