大阪市立大学と理化学研究所は2019年5月8日、超流動ヘリウム中の微粒子の不可解な運動が、直接見ることのできない量子渦の動きに起因していることを明らかにしたと発表した。
極低温の液体ヘリウムは、量子力学的効果が強く効く量子液体と呼ばれ、液体の粘性がゼロとなる「超流動」状態になる。そして、その液体中には、量子渦という渦の強さが同じで安定した理想的な渦が存在することが知られている。
一方、気体や液体のさまざまな「流れ」は、理学や工学など多くの分野で膨大な研究が行われてきた。そして、その流れを探索するためによく用いられるのが、微粒子を混入してその運動を観察する手法だ。
研究グループは今回、-271℃の超流動状態の液体ヘリウムに漬けた金属をレーザー光で破壊し、生成した微粒子を電場により液面で捕集する技術を開発した。そして、微粒子の運動を観測し、他の微粒子と異なる奇妙な運動を行う一群の粒子の存在を確認した。
そして、これらの粒子の奇妙な運動が、超流動ヘリウム特有の量子渦に起因するのではないかとの考えから、理論および数値研究を実施。その結果、量子渦の芯に微粒子が捕獲され、量子渦の運動に微粒子が振り回されていることが分かった。
研究グループによると、この成果は、乱流を含む、さまざまな流れの研究に重要な知見を与えるという。また、微粒子と渦を通じて流れを制御する道が拓けるとしている。