東北大学は2019年3月6日、リチウムイオンが高速で伝導する新たなリチウム超イオン伝導材料を開発したと発表した。同材料を電解質として使用することで、全固体電池の高エネルギー密度化が期待できるという。
全固体電池は、固体状の電解質(固体電解質)を用いる次世代電池で、液体状の電解質(液体電解質)を用いる現在のリチウムイオン電池に比べて安全性が高い。さらに、液体電解質では使えなかったリチウムや硫黄などの高エネルギー密度電極への適用可能性が広がるため、蓄電池の高エネルギー密度化も期待される。一方、全固体電池の十分な電池作動のためには、固体電解質のリチウムイオン伝導率が室温(25 ℃)で1mS cm−1以上という、液体電解質に匹敵するイオン伝導率が求められる。
こうした中、研究グループは、錯体水素化物が錯イオンの不規則性を高めることでリチウム超イオン伝導を誘起できることに着目。25℃で6.7mS cm−1ものイオン伝導率を示すリチウム超イオン伝導材料の開発に成功した。
また、開発した材料と高エネルギー密度を示すリチウムとの界面におけるリチウムの動きやすさを評価。界面抵抗としてこれまでで最も低い0.78Ωcm2となることを確認した。この結果は、同材料が固体電解質としてリチウム負極に対する高い安定性を持つことを意味するという。
これらの結果を受け、実際に全固体電池を製作して充放電特性を調べた。その結果、25℃での安定な動作と、2500Wh kg−1という、リチウム負極を使用した全固体電池の中で最高のエネルギー密度を持つ、つまり電池の使用時間が大幅に伸びることも実証した。
研究グループによると、錯体水素化物の水素クラスターのデザインにより、リチウムイオン伝導率のさらなる向上も可能だと説明。今後もリチウム超イオン伝導材料の開発を進めるという。また、高エネルギー密度電極に対する高い安定性を活かした新しいエネルギーデバイスの設計も目指すとしている。