- 2019-4-13
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- 3Dタイムラプスイメージング(経時変化映像化)技術, DNA, Lior Appelbaum, Nature Communications, バル=イラン大学, 覚醒の代価
動物はなぜ眠るのか?その理由はいまだ謎のままである。しかし、イスラエルのバル=イラン大学の研究チームがその謎を解く鍵を発見した。生きた魚の脳内を3Dタイムラプスイメージング(経時変化映像化)技術で撮影し、DNA損傷の修復作業が睡眠中に行われることを示したのだ。
DNAは放射線などの外的要因やニューロン活動などの内的要因により損傷を受ける。DNAの損傷は生物が目覚めている間に蓄積し、場合によっては生命に危険なレベルに達することもある。バル=イラン大学のLior Appelbaum教授は、DNAの損傷が蓄積することを「覚醒の代価」と呼んでいる。
この覚醒の代価が睡眠によって補われることを、Appelbaum教授率いる研究チームはゼブラフィッシュという小型の熱帯魚の染色体活動を観察することで明らかにした。ゼブラフィッシュは体が透明で人間と似た脳を持ち、生きている動物の単一細胞を研究するのに適している。
研究チームは高解像度の顕微鏡と3Dタイムラプスイメージング技術を活用し、覚醒時と睡眠時のDNAと核タンパク質の動きを観察した。その結果、睡眠時に染色体の動きがより活発になり、DNA修復の効率が高くなることが分かった。染色体の動きは睡眠中、覚醒時の約2倍に増えていた。
Appelbaum教授は睡眠時にDNAの回復が進む理由を、路上に発生したくぼみの修復に例えて、「道路の消耗は、特に日中のラッシュアワーに激しくなる。交通量が少ない夜に修復するのが、一番簡単で効率的だ」と説明している。
捕食のリスクが増すにもかかわらず、動物にとって睡眠は重要だ。睡眠はなくなるどころか、魚類などの行動睡眠から、鳥類や哺乳類に見られる脳波睡眠へと進化してきた。Appelbaum教授は「効率的なDNAの維持に睡眠が必要なことが恐らく、睡眠が進化して動物界に今でも存在する理由だ」と述べる。
研究結果は、2019年3月5日付けの『Nature Communications』に掲載されている。
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