コンピューター能力を向上させる「ネガティブキャパシタ」の可能性

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2つの分極ドメインを持つ強誘電体ナノ粒子において、電荷が加えられるときの、分極ドメイン壁の移動の様子を示す。ドメイン壁の移動の結果、ネガティブキャパシタ効果が生じる。

アルゴンヌ国立研究所の研究チームが、フランスとロシアの研究者とともに、持続的に安定した「ネガティブキャパシタ」の可能性を明らかにした。シミュレーション計算によって、外から加えた電圧を増幅できる強誘電体ナノ粒子の可能性を示したもので、薄膜化に頼らないデバイス上のキャパシタ容量の増大、ゲート絶縁膜を強誘電体薄膜に置き換えることによるMOSトランジスターの高性能化などの応用に発展すると期待される。研究成果は、2019年2月26日の『Communications Physics』誌にオンライン公開されている。

近年、HfO2などの強誘電体薄膜が、ネガティブキャパシタ即ち負の誘電率を示すことが、幾つかの実験で示唆されている。通常、誘電体は外部電場を遮蔽しようとして分極するが、この分極が行き過ぎると外部電場と内部電場の向きが逆になり、分極電荷の符号が通常の誘電体とは反対になる。その結果、電荷量と電圧の関係が、通常の常誘電体の場合とは逆になるなど、様々な特異現象が生じる。これまでに、常誘電体と強誘電体薄膜を直列に組み合わせることにより、常誘電体における電圧を選択的に増加させ、システム全体の電圧よりも高くできることが見出されている。これは、外から加えた電圧を増幅させること、つまり回路全体を低電圧で作動させながら、必要とする領域に選択的に高電圧を配分することができる。

しかしながら、これまでに提案され設計されてきたネガティブキャパシタは、一時的かつ過渡的に生じるもので、持続的に安定したネガティブキャパシタが実現可能なのかどうか、必ずしも明確になっていなかった。研究チームは、強磁性体の磁区のような2つの分極ドメインによって、全体として特定の分極を示さない強誘電体ナノ粒子が、外部からの電圧負荷に対して、どのようなキャパシタ特性を示すか、PbTiO3の特性値を用いてシミュレーション計算した。

その結果、電圧負荷によりドメイン壁が移動するとともに、ナノ粒子周縁部近傍ではドメイン壁の界面エネルギー減少効果によって、更に移動が促進されることを見出した。このメカニズムによって発生する強力な内部電場によってネガティブキャパシタが形成され、特性も安定し持続的かつ可逆的であることが確認された。

現在コンピューターの演算性能やデータ容量の増大は,半導体デバイスの微細加工技術によって支えられている。小型化する中でもデバイス上のキャパシタの容量を維持する必要があるが、誘電体材料の誘電率向上やデバイスの薄膜化も物理的な限界に近づいており、このような問題を解決する方法として、ネガティブキャパシタの活用が期待される。

関連リンク

Newly devised static negative capacitor could improve computing

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