【連載】エンジニア専門の転職支援会社のキャリアアドバイザーが、注目業界の転職市場動向を解説__半導体、医療業界編

少子高齢化による労働人口の減少などによって、日本国内で「人手不足」が深刻化しています。厚生労働省が発表している「労働経済動向調査(令和5年2月)」の「2 労働者の過不足状況」を見ると、製造業においては労働者過不足判断D.I.(不足と回答した事業所の割合から過剰と回答した事業所の割合を差し引いた値)が43ポイントになるなど、人手不足の傾向が顕著です。

こうした人手不足を背景として、製造業各社も人材獲得に力を入れています。今回は、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストのキャリアアドバイザー3名に、それぞれが注目している業界の転職市場動向や、求められる人材像、技術ニーズなどを取材しました。第1回は、「半導体」と「医療」です。(執筆・撮影:編集部)

<プロフィール>
メイテックネクスト コンサルタント 筧 隆志(かけひ たかし)さん
国立高専で電気工学を専攻し、卒業後11年間、電気・電子回路系エンジニアとして半導体製造装置開発に従事。その後、中国にて理系大学生を対象とした教育に従事し、製品設計を教え、就職支援を行う。支援実績は5,000人超、電気設計エンジニアの視点とグローバルな視点から、皆様と企業との最適なマッチングを実現したいと考えています。短期的にだけでなく、長期的にも良かったと思えるような転職をして頂けるように、精一杯支援致します。

挑戦の敷居が下がり、幅広い分野で製品・サービス開発を経験できる「半導体業界」

人材ニーズはあるも、経験者の採用が困難に

これまで、世界的な半導体の需要増加と供給不足などから、半導体業界全体でエンジニアの獲得競争が続いてきました。2023年に入り、ウクライナ戦争など地政学的なリスク、米欧の利上げ継続やインフレ傾向から、エレクトロニクス製品を含む消費減速の懸念も出てきていますが、足元の国内半導体業界の人材ニーズは旺盛な状況が続いています。TSMCの熊本工場建設などの大きなニュースもありましたが、それ以外にも、ソニーグループや電力系のデバイスを扱うデンソーやロームなどのメーカーも大量採用を行っています。

このように旺盛な人材ニーズがあるのですが、同時に「半導体に携われる知識や経験を持った人材がいない」という採用課題も出てきています。背景には、日本国内で研究開発から製造まで全て対応するビジネスモデルの限界による、一部部門の海外移転や会社合併、デバイスメーカーがここ10年程新卒採用にブレーキをかけていた影響や、大学で半導体を学ぶ学生数の減少などが挙げられます。こうした要因から、半導体業界の人員構成はベテランが多く、若手が少なくなり、即戦力となる人材の獲得が困難な状況になっているのです。

採用要件が緩和され、半導体業界へ挑戦するチャンスが広がる

人材の獲得が難しくなったことから、半導体デバイス、製造装置メーカーでは求職者に求めるスキルやキャリアの条件を大幅に緩和しています。例えば、開発部門であれば電気や物理の知識があれば良し、製造部門なら情報系以外の理系知識があれば良しといったように、半導体に関わった業務経験がなくても、理系の知識があれば半導体業界に挑戦することが可能になっています。

また、従来無かったニーズとして、半導体の素材や材料、ガスなどの条件出しや合成などの業務で、化学系人材を採用する企業も増えてきました。さらに、デバイス・製造装置メーカーが半導体製品や製造装置をつくるだけでなく、製品から取得したデータを用いて新たにSaaSサービスを自社で開発するようになり、データ分析やwebアプリ開発の経験があるIT系人材の需要も高まってきました。

このように、今の半導体業界は間口が非常に広くなっていて、機械、電気、化学、ITなど幅広い分野で製品やサービス開発を経験できるため、この業界で働くことはエンジニアにとっても強みになると思います。中でも製造装置メーカーは、技術をとことん追求したい人にお勧めです。半導体デバイスをつくる装置はまだ解明されていない技術が多く、デバイスが変われば、製造装置も仕様や技術を大幅に変える必要があることから、常に新しいテーマや技術に挑戦しながら、ものづくりに携わることができます。特に機械系や電気系の強電分野やソフトウェアエンジニアにとっては、製造装置メーカーでの業務は大きなやりがいが得られるのではないでしょうか。

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コロナ対応とIT化。2つの大きな流れで需要が高まる「医療業界」

医療体制の逼迫を背景とした、大手企業の開発要員募集が継続

医療業界では2つの大きな流れがあります。1つは「コロナウイルス対応」、「超高齢化社会」などによる医療体制の逼迫(ひっぱく)から、レントゲンなどの医療機器のポータブル化や増産ニーズ、医療従事者の負担軽減のための機器や装置の効率化が求められるようになったことです。

こうした動きに対応するため、テルモやオリンパス、GE Healthcare Japanなどの大手企業を中心とした医療機器メーカーは、開発要員として機械、電気、ソフトウェアエンジニアの採用を継続して行っています。

医療の領域で高まる、IT人材のニーズ

もう1つの動きは「IT化」です。医療従事者の負担を軽減するために、電子カルテなど病院ごとに異なるシステムの統合や、医師が患者の診察に使用するための画像認識やAI技術の導入が注目されています。今は、こうした領域に強みを持つ研究開発型のIT企業も増えているので、これまでは医療業界のエンジニアニーズと言えば、装置や機器の開発が主体でしたが、今はITシステムの占有率が上がってきているのが特徴と言えます。IT系のニーズとしては、AIなどのアルゴリズム開発ではなく、これらの技術を活用して、病院や医師の個別のニーズに応えるアプリケーション開発となります。また、ヘルスケアの領域でも、着用者のバイタルを図るようなサービスなどでフロントエンド、バックエンドの開発で相当数の求人が出ている状況です。

今後の医療業界の注目技術は、画像処理と光学

医療業界で求められる技術や素養はそこまで特異なものはなく、医療業界の経験者でなければNGということもありません。例えば機械系なら大きなものでも小さなものでもいいので、設計経験があれば良し、IT系であればサービスやアプリケーション開発の経験があれば可といった要件が多いように思います。

ただ、お客さまと接して話を聞く中で、今後医療の領域では画像処理技術を持つエンジニア、機械系では光学技術を持つエンジニアが重宝されるだろうと感じています。これから医療業界に挑戦しようと考えているエンジニアの方は、これらの技術の習得に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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