- 2019-5-20
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Anish Tuteja, Michael Thouless, コーティング, ミシガン大学, 界面破壊靱性, 着氷防止剤
米ミシガン大学は、大型の構造物にも使える効果が極めて高いスプレー式の着氷防止剤を開発した。このスプレーでコーティングされた構造物に付着した氷は、弱い風、あるいは氷自体の重さで落とすことができる。
船舶や飛行機、送電線、その他大きな構造部の着氷防止は、数十年にわたり研究されてきた課題だ。新しいコーティングはそれを完成に近づけるもので、模擬送電線による試験では、コーティングにより氷は即座に落ちたという。
ミシガン大学の研究者達は、従来からの着氷防止コーティングは、面積が大きくなるほど着氷除去効果がなくなることを見出した。これでは凍結面積が大きくなるほど、効率・安全性の低下、除去費用の増加など、課題も大きくなる。
材料科学工学のAnish Tuteja准教授は、「何十年もの間、コーティングに関する研究は、氷の付着強度を下げることに焦点を合わせていた。しかし、この方針の問題点は、氷が大きく広がるほど、多くの力が必要になることだ。面積が十分に大きくなった途端にコーティングが効果的でなくなり、我々は低付着強度の限界に突き当たったことに気づいた」と、従来のアプローチの限界を説明する。
そこで研究者達は、付着強度に代わって界面破壊靱性に着目した。低靱性の表面には亀裂が入りやすくなり、氷が割れるようになる。公開された動画では、コーティングを施した板と施さない板を使った実験の様子が映されており、板を傾けると、コーティングをしていない板上には氷が張り付いたままになっているが、コーティングをした方では、氷がざらざらと落ちていく。
機械工学のMichael Thouless教授によれば、界面破壊靱性の概念は、破壊力学の分野ではよく知られており、積層表面や航空機用接着接合などの基盤となっているという。
着氷は重大な事故につながる場合がある。例えば、極寒の海で操業する漁船ではハンドレールやブルワークに着氷し、除去しなければトップヘビーになり転覆する恐れがある。このスプレー式着氷防止剤が商品化し氷が自然に落ちるようになれば、海難事故の防止にも大いに貢献することになるだろう。
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