3300V級IGBTを5Vゲート電圧でスイッチングすることに成功――シリコンIGBTのさらなる性能向上が可能に 東大など

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東京大学は2019年5月20日、北九州環境エレクトロニクス研究所などと共同で、3300V級シリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のスイッチングを、ゲート電圧5Vの低電圧で駆動することに成功したと発表した。

今回の研究は上記の他に、明治大学、三菱電機、東芝デバイス&ストレージ、東京工業大学、九州大学、九州工業大学と共同で行われた。

IGBTはパワートランジスタとして広く普及しているが、シリコンIGBTは電力変換効率などの性能限界に近づいていると言われてきた。しかし、2013年に九州工業大学の大村一郎教授のグループにより提唱された「IGBTスケーリング」の概念を応用することで、シリコンIGBTの性能が向上する可能性がでてきた。IGBTスケーリングでは、大規模集積回路のCMOSと同様に、IGBTのMOSトランジスタ部分を比例縮小し、ゲート電圧も同比率で低減。MOSトランジスタのピッチは縮小しないことで、IGBT特有の電子注入促進(IE)効果が起こり、電流密度が向上することがシミュレーションで示されていた。

IGBTでの大電流のスイッチング時には、1000V以上もの高電圧になる。スイッチングを制御するゲート制御回路の電圧は、徐々に低電圧化が推進されてきたが、現在は15Vが用いられている。IGBTスケーリングでは、スケーリング係数が3(寸法が3分の1)になれば、ゲート制御電圧も3分の1の5Vになる。しかし、一般的に数千ボルトのスイッチングを5Vで行うことは、ノイズなどの観点から困難であると考えられてきた。

今回の研究では、クリーンルームにおいて3インチ基板でシリコンIGBTを試作できる環境を整備。寸法を通常の3分の1に縮小し、オン電流5A級の大電流に対応するスケーリング係数3の3300V級IGBTを設計、試作した。そして、5Vのゲート電圧で正しくスイッチングすることを確認した。東京大学によると、3300V級のIGBTを5Vのゲート制御電圧でスイッチングすることは、世界初だという。

さらに、通常の寸法のIGBTと比較して電流密度が向上し、ターンオフ時のスイッチング損失も35%低減できた。また、制御電圧の低減によってゲート駆動に必要な電力が10分の1ほどになり、ゲート制御回路が小型化。標準的なCMOSプロセスを用いてディジタルCMOSベースの小型チップ化も可能になる。これにより、さまざまなディジタル回路の資産を集積化できるという。

今回の研究によって、今後もシリコンIGBTがスケーリングによって性能向上できることが示され、今後増大する電力抑制への貢献が期待できるという。

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