高品質なペロブスカイト薄膜の汎用性の高い成膜手法を開発――ペロブスカイト薄膜の大面積塗工が可能に 京都大学

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(a)8連サブモジュールの写真と太陽電池特性(b)ダイコーターで塗布作製したペロブスカイト薄膜(A4 サイズ幅)

京都大学は2019年5月28日、独自開発の高純度化前駆体材料を用いた汎用性の高い塗工プロセスで、高品質なペロブスカイト薄膜が作製できることを発見したと発表した。同手法により、再現性良く高い光電変換効率を示す太陽電池セル(光電変換効率19.8%)の作製に成功した。加えてペロブスカイト薄膜の大面積塗工も可能になり、22cm2の8セル連結モジュール(電圧8.64V、光電変換効率14.2%)の作製にも成功した。

近年、ペロブスカイト半導体材料を光吸収層に用いたペロブスカイト太陽電池が、溶液の塗布により作製できる次世代の高効率太陽電池として注目されている。国内外で材料・デバイス構造の開発や成膜方法の改良が進み、ペロブスカイト太陽電池の特性は著しく向上。研究室ベースの小型の太陽電池セルでは、光電変換効率が20%を突破した。企業でも、ペロブスカイト太陽電池の実用化を志向した研究開発が活発化している。

高性能ペロブスカイト太陽電池の作製では、高品質なペロブスカイト半導体膜の作製が重要だ。ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた研究開発では、汎用性の高い成膜法に基づいた半導体薄膜の大面積塗工技術の開発が鍵となっている。これまで、高性能小型太陽電池セル(2.5cm角)の作製ではスピンコート法(溶液で濡らした基板を高速回転し、遠心力で薄く均一な溶液層を形成することにより薄膜を作製する手法)で材料の溶液を塗布する際、膜が乾いてしまう前に貧溶媒を滴下することでペロブスカイト薄膜を成膜していた。

しかし、貧溶媒の滴下のタイミングは塗布する環境によって異なるうえ、最適化した条件と1秒でもずれてしまうと高品質なペロブスカイト膜が得られない、塗工プロセス幅が極めて狭い手法だ。このような汎用性に欠ける成膜法は研究室ベースでの小型セルの作製には利用可能だが、ペロブスカイト太陽電池の実用化を見据えた大面積塗工への展開には、より塗工プロセス幅が広く、ロールtoロール法など他の印刷技術へも広く展開できる汎用性の高い塗布方法が強く求められている。

今回京都大学の研究グループは、材料化学の視点から、ペロブスカイト半導体の高純度化前駆体材料の開発と、それを用いた独自の成膜手法の開発というアプローチでこの課題に取り組んだ。研究グループはこれまでに、ペロブスカイト薄膜の高純度化材料として、精製ヨウ化鉛(PbI2)を開発。同材料は東京化成工業によって市販化され、ペロブスカイト太陽電池の研究分野で標準材料として広く利用されている。

また、研究グループは第二世代の高純度化前駆体材料として、ハロゲン化鉛ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)のDMF錯体を開発。この錯体は、従来の材料に比べて、99.998%という高い純度をもつことに加えて、一般的な溶媒に「早く」かつ「よく」溶けるなどの特徴をもつ。研究グループはこの錯体の特徴に着目し、大面積塗工技術にも展開可能な 「ゆっくり」塗布プロセスの開発に成功した。

研究グループは、様々な溶媒に溶かしたペロブスカイトの溶液がスピンコート中にどのように乾くのかを系統的に調査。その結果、同程度の高沸点溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)とジメチルホルムアミド(DMF)でも、より揮発性の高いDMFを溶媒として用いた場合、スピンコート条件下ではわずか数秒程度で膜の表面の乾燥が始まるが、DMSOだけを溶媒に用いた場合、膜が乾燥し始める時間が50秒以上も遅くなることを見出した。

今回開発したハロゲン化鉛ペロブスカイトのDMF錯体では、従来比で30%も高い濃度のDMSO溶液を利用できるようになり、350nm の厚さの均一なペロブスカイト膜の作製が可能になった。また、DMSO溶液を用いた「ゆっくり」塗布プロセスでは、スピンコート中に貧溶媒を滴下するタイミングを100秒後まで遅らせることが可能だ。さらに続くプロセスでは82~95秒後の間のどのタイミングで貧溶媒を滴下しても同様に均一な高品質ペロブスカイト膜が得られる。

同手法を用いることで、これまで作製してきた0.1cm2サイズの高性能太陽電池セルを再現性良く作製できるだけでなく、より大きな面積の太陽電池の作製も可能になる。実際に研究グループは、22cm2のサイズで電圧8.64V(1.08V/セル)の出力をもち、14.2%の光電変換効率を示す8個のセルが直列に連結したサブモジュール太陽電池を作製した。

©はやのん理系漫画制作室

今回、独自の高純度化前駆体材料であるハロゲン化鉛ペロブスカイトのDMF錯体を用いて開発した「ゆっくり」塗布方法は、高純度・早く溶ける・よく溶けるといった錯体の特徴を活用している。今回の研究成果は、ペロブスカイト半導体薄膜の塗布作製法に新潮流をもたらすとともに、印刷技術を用いた大面積モジュールの作製にもつながるという。

今後研究グループは今回開発された手法をもとに、京都大学のCOIプロジェクトに参画する企業および京大発ベンチャー企業のエネコートテクノロジーズとの共同研究により、ロールtoロール方式を含む大面積塗工技術開発を進め、2021年を目処にペロブスカイト太陽電池の量産化技術の確立と「どこでも電源」としての社会実装を目指す。

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