東工大、二酸化炭素を資源に変える有機分子触媒を発見――高選択性と高回転数を両立

有機分子触媒による二酸化炭素とヒドロシランからのギ酸シリル合成(上)と触媒の分離と再利用のイメージ(下)

東京工業大学は2019年6月17日、二酸化炭素(CO2)の資源化反応において、高い選択性と回転数を両立させる有機分子触媒を発見したと発表した。今回新たに触媒として見出したのは、ギ酸有機アンモニウムの一種の「ギ酸テトラブチルアンモニウム」だ。

従来の特殊な金属や希少な元素を用いた触媒は、環境負荷が大きく高コストだった。有機分子触媒を用いた報告もあったが、触媒の効率を示す触媒回転かもしくは選択率のいずれかが高いもののみで、それらを併せ持つ効率のよい触媒は発見されていなかった。

今回東京工業大学の研究グループは、ギ酸有機アンモニウム塩の一種であるギ酸テトラブチルアンモニウムが、CO2とヒドロシランからギ酸シリルを合成する反応において、高い活性を示すことを発見した。ギ酸シリルは、水を添加するだけで容易にギ酸へ変換でき、さまざまなカルボニル化合物やアルコールなどの合成中間体への転換も可能な物質だ。

ギ酸テトラブチルアンモニウムによって、ギ酸イオンからヒドロシランに強力な電子供与が行われ、それにより活性化されたヒドロシランがCO2と反応することで高い活性化を示すと考えられるという。同触媒による反応では、目的生成物の選択率を99%に維持しつつ、触媒の効率を表す触媒回転数も1800を示し、これまでの有機分子触媒では難しかった高い選択率と回転数を両立させた。

また、触媒反応は60℃で進行するが、反応終了後に室温まで冷却することで、触媒であるギ酸テトラブチルアンモニウムを析出し、ろ過によって分離、再利用できるため環境にもやさしい。

今回の研究は、今後のCO2転換のための有機分子触媒の設計指針を大きく変える可能性があるという。また、安価で入手も容易な還元剤を用いるCO2変換反応へと適用範囲を広げることで、CO2資源化プロセスの確立に貢献できるという。

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