東芝は2019年6月18日、透明化した亜酸化銅(Cu2O)を用いたタンデム型太陽電池において、結晶シリコン(Si)太陽電池単体での発電効率を上回る効率の実証に成功したと発表した。結晶Si太陽電池単体の効率は22%だが、開発したタンデム型太陽電池の効率は23.8%だという。
タンデム型太陽電池は、異なる性質の太陽電池(セル)をボトムセルとトップセルとして重ねたものだ。両方のセルで発電することで、全体としての発電効率を上げる。
東芝は2019年1月にすでに、亜酸化銅を用いたセルの透明化に成功するとともに、これをトップセルに用いたタンデム型太陽電池(透過型Cu2O太陽電池)を開発していた。亜酸化銅は地球上に豊富に存在し、低コスト化が期待できる。その効率は、トップセルが4.4%、ボトムセルが17.6%、全体で22%と、結晶Si単体と同等の効率だった。
透過型Cu2O太陽電池は下から、裏面電極、p層、n層、表面透明電極で構成されており、p層に採用したCu2O薄膜で短波長光を吸収する。発生したプラスの電流は裏面電極から取出し、マイナスの電流はn層を介して表面透明電極から取り出す。これにより、光を電気のエネルギーに変換する。
p層とn層の組み合わせによっては、2つの層の界面に生じる電位差(2つの層のエネルギーのズレ)が大きくなる。そのため、ズレの分、両方の電極から電気として取り出せる電圧が低下し、効率が低下してしまう。そこで東芝は、n層の材料に着目し、新しいn型酸化物半導体材料を適用することで、電位差を縮小に成功した。
結晶Si太陽電池単体の効率22%だが、改良された透過型Cu2O太陽電池はそれより1.8%高い23.8%だ。従来の透過型Cu2O太陽電池とは異なり、「タンデム型太陽電池の発電効率がボトムセル単体の効率よりも高くなる」というタンデム型の最大の特徴を実現している。東芝は今後、透過型Cu2O太陽電池の効率30%台を目指すという。