自動車の様々なシステムを制御するECUとは。ソフトウェアのソースコードは最新戦闘機の数倍にも及ぶ――AZAPAエンジニアリング 井村佳人氏

AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村佳人氏


自動車に搭載され、様々な機能を制御している電子制御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)。そのECU開発の現状やトレンド、今後の展望など、最新情報を紹介します。

第1回目は、「自動車の様々なシステムを制御するECUとは」と題し、自動車ECU開発などのエンジニアリング業務支援を提供するAZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村佳人氏にお話を伺いました。(執筆:後藤銀河)


――始めに、自動車にECUが搭載されるようになった背景を教えてください。

[井村氏]自動車にECUが搭載されるきっかけになったのは、1970年代以降強化された排出ガス規制に対応するため、エンジンの電子制御化が進んだことです。それまでのエンジンはキャブレターなど機械式の燃料噴射制御が中心でしたが、ECUを搭載することで、より細かな制御が可能になりました。

例えばガソリンエンジンの場合、エンジンをスタートしてから、走行している間の車の状態を記憶し、最適化する学習機能が搭載されています。アクセルが踏まれた量に対応して、ガソリンを噴射する量や、エンジンに吸い込まれている空気の量などを計算しながら、最も燃費が良い状態、排気ガスがクリーンな状態を保つよう、電子的に制御する仕組みが組み込まれています。

こうしたエンジン制御以外にも、AT(オートマチックトランスミッション)やブレーキ、パワーステアリング、ナビゲーションシステムなど、自動車1台あたり50個を超えるECUが搭載されるようになってきました。自動車の「走る」「曲がる」「止まる」という基本機能に加え、窓の開閉といったボディ電装、エアバッグなどの安全装備、オーディオやナビゲーションといった様々なシステムを制御するものも含めて、自動車全体で使われているソフトウェアのソースコードのボリュームは2億行とも言われています。最新のジェット戦闘機を制御するソフトウェアのソースコードと同等以上といわれています。

――御社では、ECU開発にどのように関わっていますか?

[井村氏]弊社では、完成車メーカーのエンジニアと一緒に制御仕様書を作成したり、アーキテクトの設計を行ったりする、ECU制御開発支援を一つの事業としています。戦略としては「Tier(ティア)0.5」という立場で、完成車メーカーとECUサプライヤの間に立ち、企画の段階から携わり、業務が円滑に進むよう、調整や取りまとめを行うようなビジネスになります。(注:Tierは自動車業界で1次請け2次請けという系列メーカーを意味する言葉)

もう一つはECUの製品化事業で、メーカーから「こういうECUが作りたい」という依頼を受けて、その要件を紐解いて仕様化し、メーカーでの実験用に小ロットでECUを試作して納品するというB2Bのビジネスになります。

弊社は、特にモデルベース開発(MBD)を得意としています。昔はECUのソフトウェアをアセンブラ、C言語で書いていましたが、機能が複雑になるにつれてソフトウェアの規模も膨れ上がってきて、MBDなど効率的な開発手法が必要になってきています。

次回は「ECUの変遷」と題して、お話を伺います。


井村佳人(AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長)
自動車のエンジンECU設計に深く携わり、エンジニアリング会社社長、SIerの経営を経て、2017年11月に同社に参画し、現職。OEMメーカーと共同で新規事業、研究開発などを手掛けている。

取材協力先

AZAPA エンジニアリング株式会社


ライタープロフィール

後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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