ECUを取り巻く環境。ECUの標準化は欧州が主導、日本の強みは信頼性の保証――AZAPAエンジニアリング 井村佳人氏

AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村佳人氏


この連載では、自動車に搭載され、様々な機能を制御している電子制御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)、その最新トレンドを紹介しています。

第4回目の今回は「ECUを取り巻く環境」と題し、AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村佳人氏にお話を伺います。(執筆:後藤銀河)

第1回目:「自動車の様々なシステムを制御するECUとは」
第2回目:「ECUの変遷」
第3回目:「最新のECU事情」


――第2回で、統合ECUの開発で欧州系サプライヤが先んじていると伺いました。ECU開発に関して日本と欧州に違いはあるのでしょうか。

[井村氏]まず、車載電子システムが複雑になるにつれ、各メーカーがバラバラに開発するよりも、ECUに搭載されるOSやミドルウェアを各社や業界団体で共通のものにすることで、構成するコンポーネントや通信を標準化し、開発を効率化しようという動きがあります。これは欧州、特にドイツのメーカーを中心とした標準化団体「AUTOSAR(オートザー)」が中心となって標準化を進めていて、日本の自動車メーカーやサプライヤは、誤解を恐れずに言えば、それを追従しているという状況にあります。もちろん、日本の制御開発には素晴らしいものがありますが、規格化、標準化というところのプレゼンスでは、少し負けているというのが実態でしょう。

――日本が主体的に標準化を推進するという動きはないのでしょうか?

[井村氏]日本では車載ソフトウェアの標準化団体として「JasPar(ジャスパー)」が活動しています。元々AUTOSARには日本の要件が織り込まれていないので使いにくいという声もあり、これまでのJasParの活動は、AUTOSARのアレンジや信頼性の強化などが主でした。極端にいうと「右にならえ」となっているのではないかと、個人的には危惧しています。弊社でもメーカーとECUの仕様書を検討する際、「コンポーネントにはAUTOSARのCP(Classic Platform:従来型ECU向けのプラットフォーム)のR4.2を使ってくれればいいから」と指定されることがよくあります。

高品質なものを作るというのは日本の強みだと思いますが、新しい機能、規格などを用意しつつ、しっかりと売り込みをかけてくるのは、ドイツなど欧州が強いと感じますね。統合ECUについても、国内では取り組みが始まったばかりですが、欧州ではボッシュなどが先行して数年前から製品化しています。

――日本のモノづくりが後手に回っているということでしょうか?

[井村氏]ただ遅れているわけではありません。国際競争力を高めるために、元々日本の企業が持っている強みを生かしていこうという取り組みもあります。経済産業省が主導し、平成27年に「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を設置し、自動車の先行開発・性能評価のプロセスにモデルベース開発(MBD)を活用する方策を、自動車メーカーや部品メーカーが集まり、検討しています。

弊社も事務局として参加していますが、MBDのモデルを使うことで、アセンブラやCに比べて分かり易くはなるものの、ローレベルのOSやドライバとの結合部分はちょっと弱いのではと感じています。処理抜けの確認も必要でしょうし、確実な実証実験が重要になってくるでしょう。こうしたところを丁寧に作り、メーカー間できちんと摺合せを行えば、高品質なものづくりという点でも競争力を発揮できると思います。


井村佳人(AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長)
自動車のエンジンECU設計に深く携わり、エンジニアリング会社社長、SIerの経営を経て、2017年11月に同社に参画し、現職。OEMメーカーと共同で新規事業、研究開発などを手掛けている。

取材協力先

AZAPA エンジニアリング株式会社


ライタープロフィール

後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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