金属を骨のように治す――溶接を使わない多孔質金属の修復方法を考案

米ペンシルベニア大学の研究者達は、多孔質の発泡金属の特性を損なうことなく修復する技術を開発し、科学ジャーナル『Advanced Functional Materials』に発表した。

金属製品の修理には破損部分を高温に熱して接続する溶接法が広く行われているが、材料によっては溶接が適さない場合がある。例えば、多孔質の発泡金属は軽く、衝撃吸収性に優れているが、溶接して修理しようとすれば気泡が埋まり、その特性が損なわれてしまうため、溶接による修理には不向きだ。

研究者達は、発泡したニッケルを試料とし、多孔質の金属を室温のままで修復する方法を考案した。これは、溶接トーチで金属を溶かすのではなく、破損許容度がニッケルよりわずかに低いポリマーを化学蒸気沈着させるというものだ。こうすることにより、試料が破損したときにはコーティングが破れ、ニッケルの破損部分が露出する。試料を電解液漕に入れて、電気メッキを施工すると、破損部分にはニッケルが電着して修復されるが、それ以外の部分はポリマーで覆われているため、メッキはされない。

研究者達は、修復の過程が骨折が治る様子と類似しているとして、この方法を「ヒーリング(治癒)」と呼んでいる。論文共著者のJames Pikul准教授は、「我々の血液のように、修復に必要な電解液を発泡金属製品に組み込むことも可能だ。破壊されると電解液が損傷部分を取り囲み、バッテリーから電力を得て金属を治せるだろう」と述べている。また、この方法を使えば、修理する部分を取り外す必要がないので、車のドア、ロボットアーム、あるいは宇宙ステーションの構造部分などの修理に特に有用だとしている。

関連リンク

Low‐Energy Room‐Temperature Healing of Cellular Metals

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る