愛知製鋼は2019年10月25日、豊田中央研究所および近江鉱業と共同で、高い蓄熱密度を持つカルシウム系蓄熱材を開発、それを用いた工場排熱を利用した蓄熱システムを自社工場に設置し、CO2排出量を大幅に抑制できることを実証したと発表した。
今回開発した蓄熱材は、消石灰(Ca(OH)2)に400℃以上の熱を加えると水を排出しながら生石灰(CaO)に変化して蓄熱する原理を利用。生石灰に水をかけると消石灰に戻るが、その際に発生する熱を有効利用する。
同蓄熱材は石灰を主原料として少量の粘土鉱物を分散させ、それを高密度で成形/結着させてプレート状にしたものだ。高い蓄熱密度に加えて、従来の蓄熱材を大幅に上回る数千回の反復利用が可能だ。
今回この蓄熱材を利用して愛知製鋼では、400℃以上の工場排熱を回収して蓄熱し、再利用できるシステムを自社刈谷工場内に設置。ステンレス鋼の加熱炉から発生する排熱を回収し、酸洗工程で酸液を加熱するための蒸気として再利用させた。これにより、CO2の排出量は従来の燃焼式ボイラーを用いた場合と比較して約80%削減され、同時にランニングコスト削減にもつながることを実証した。
今回の実証では、豊田中央研究所が開発蓄熱材を含む基礎技術の研究、近江鉱業が開発蓄熱材の成型技術を構築し、愛知製鋼が蓄熱システムの設計と工場での実証をそれぞれ担当した。
今回開発した蓄熱システムは、工場排熱の有効利用の他にも、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの蓄熱や、水素の貯蔵/輸送時に発生する熱の有効利用など、さまざまな分野への展開が期待されるという。