合金表面が酸化する過程の解明と酸化抑制に成功――酸化に強い材料や安価な触媒の開発に期待 日本原子力研究開発機構と大阪大学

日本原子力研究開発機構は2021年2月19日、大阪大学と共同で、合金表面が酸化してさびる過程の解明と酸化抑制に成功したと発表した。

同機構によると、腐食に強い材料の開発は材料科学分野において重要な目標の1つだ。今回同機構らは、合金によってより酸化に強い材料を作り出すことを目指し、広く産業用途に利用されている銅(Cu)に、異なる金属を混ぜ合わせた合金表面での酸化反応を、純粋な銅の場合と比較した。

具体的には、銅とパラジウム(Pd)の合金「Cu3Pd」、および銅と白金(Pt)の合金「Cu3Pt」の2種類の合金の表面に、通常より高速の2.3eV(時速1万3000km)の運動エネルギーを持つ高速酸素分子を照射し酸化。その結果、合金表面において、酸素はパラジウムおよび白金とは反応せず、銅とのみ反応することが分かった。

またこの際、表面の銅酸化物の下に、反応しなかったパラジウムと白金の層が形成され、それが保護膜として働くことで内部への酸化物生成を防ぐことも分かった。パラジウムおよび白金は銅よりも反応性が高い元素だが、合金化することで逆に酸化物生成が抑制されるということを見出したことにもなる。

今回の研究結果は、銅の合金に限らずさまざまな合金表面の反応性や生成物を議論する指針となり、合金化による耐酸化材料の開発への応用が期待できるという。また、金属酸化物の表面構造を精密に制御することで、従来自動車の排ガスを分解する三元触媒などに使われていた高価な貴金属を、銅などの安価な材料で代替することにもつながっていくという。

なお今回、高速の酸素の反応は、特定の速度を持つ分子だけを作り出せる「超音速分子線発生装置」を利用して反応させた合金表面を、「X線光電子分光法」という手法で調査。調査実験は大型放射光施設「SPring-8」のビームラインBL23SUで実施した。

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