- 2019-11-14
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- イオン性相互作用, イガイ, カチオン性モノマー, コンクリート, フジツボ, 北海道大学, 可逆性接着剤, 海洋付着生物, 生物模倣, 研究, 結合タンパク質, 芳香環, 芳香環モノマー, 隣位共重合法, 高分子化合物
北海道大学は2019年11月13日、海洋付着生物を模倣することで、海水中で迅速かつ強力に接着可能な可逆性接着剤を開発したと発表した。
イガイやフジツボなどの海洋付着生物は、結合タンパク質という接着剤を分泌することで、海水中でも岩に強固に接着できる。一方、これまでの人工的な接着剤は、空気中での使用を前提としたものがほとんどだった。また、水中で使用可能な接着剤も開発、市販されているものの、接着にイオン性相互作用を利用しており、この相互作用が弱まる海中では使用できなかった。
そこで、研究グループは今回、海洋付着生物の結合タンパク質では、正に帯電したカチオン性部位と芳香環と呼ばれる部位が隣接していることに着目。カチオン性モノマーと芳香環モノマーを隣り合うように結合させる化学反応「隣位共重合法」を開発した。そして、この技術により、結合タンパク質を模した高分子化合物を合成。さらに、この化合物に水を加え、架橋して固化させることで、伸縮性のあるゲル状の接着剤を開発した。
開発した接着剤を用いた、海水中での接着試験も実施した。その結果、金属、石、ガラス、プラスチックなどの様々な固体を海水中で強く迅速に接着できることを確認。その接着強度は、接着面1m2あたり6トンもの重さに耐えられる約60kPaと非常に高い。さらに、剥離と再接着を繰り返すことができる可逆性接着剤だという。なお、接着原理としては、カチオン性部位の隣にある芳香環が疎水性であることから、カチオン周辺が部分的に疎水性環境となり、イオン性相互作用が局所的に強化されるため、と予想している。また、疎水性である芳香環が被着体を覆う水の膜を破壊し、接着剤と被着体とのしっかりとした接触を促進することも、強い海水中接着が可能な理由の1つとして考えられるという。
研究グループによると、開発した接着剤は、海水中での仮止め剤や修復剤に使用できるという。また、海水中でのコンクリート製造なども実現できる可能性があると述べている。