- 2019-12-20
- 化学・素材系, 技術ニュース
- ナノポーラス化, ハイエントロピー合金, 大容量電解コンデンサ, 弁金属, 東北大学, 研究, 金属溶湯脱成分法, 開気孔
東北大学は2019年12月19日、同大学の研究グループが、チタン(Ti)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)の5成分元素からなる体心立方格子系ハイエントロピー合金のナノポーラス化に世界で初めて成功したと発表した。
2004年に台湾清華大のYehらによって概念が提案された、新しいカテゴリーの合金であるハイエントロピー合金は、従来の合金をしのぐ優れた低/高温機械的特性を持つなど、その新規性が近年注目されている。
他方、ナノポーラス化は、金属に無数の開気孔(ポーラス)を導入することで比表面積を広げて金属に新たな機能性をもたらす技術で、触媒や電極、ナノメカニクス材料などに使用されている。同大学の研究室はナノポーラス化に関する独自の技術「金属溶湯脱成分法」を持ち、さまざまな物質のナノポーラス化を通して新機能性材料の開発を進めている。
今回の研究では、ナノポーラス化が難しいとされていたハイエントロピー合金のナノポーラス化に世界で初めて成功した。今回生成した合金は、従来のポーラス合金と比較して開気孔のサイズが一桁ほど小さく(平均7nm)、それに伴い広大な比表面積(56m2/g)を持つ。加えて、研究グループはこのポーラス状態が極めて安定して維持されることも明らかにした。
さらに、今回開発した合金は、表面に化学的に安定な酸化物などの不働態被膜を形成する「弁金属」の元素を多く含有することから、これを利用した大容量電解コンデンサや、その高い形態安定性を利用した超長寿命触媒などへの応用が期待できるとしている。