JFEスチールは2021年11月10日、粉末冶金用途向けのニッケルフリー合金鋼粉「FM1300S」を開発したと発表した。ニッケル(Ni)を含まずに、引張強さ1300MPa級の高強度と、Ni含有合金鋼粉と同等以上の靱性と疲労強度を備え、被削性にも優れている。
焼結部品には、Niが4%含まれる合金鋼粉が広く使われているが、焼結後に被削性が悪化して加工費が増加することに加え、Niの市況影響を受けやすいという課題がある。
同社はNiフリー合金鋼粉「FMシリーズ」を開発、販売してきたが、4%Ni合金鋼粉、Niフリー合金鋼粉のどちらを使用する場合でも、1300MPa級の引張強さが要求される部品は高温焼結が必要となるため、部品製造時のさらなるコストの低減が求められていた。
そこで、モリブデン(Mo)粉を拡散付着させた高純度純鉄粉に、微細な銅(Cu)粉を混合したFM1300Sを開発。工場での焼結部品製造時に、特殊な炉を用いた1200℃を超える高温焼結ではなく、普通焼結で部品を製造できる。
微細なCu粉と粒子表層のMo粉が焼結を促進するFM1300Sは、普通焼結でも引張強さ1300MPaを超える高強度化に成功。さらに、高純度純鉄粉により、圧縮成形時に高密度化するため、4%Ni合金鋼粉と同等以上の高強度、高靱性、高疲労強度を備える。
FM1300Sは、従来の高温焼結で製造された引張強さ1300MPa級焼結部品に比べ、コストを大幅に低減し、エネルギー使用量やCO2排出量の削減にも対応する。今後は、高強度が要求されるスプロケットをはじめとする自動車部品や、耐摩耗性が要求される建設機械部品などへの適用を目指す。