東レは2019年12月19日、PPS(ポリフェニレンサルファイド)ポリマーが持つ優れた誘電特性や難燃性、耐薬品性を維持しつつ従来に比べて40℃以上耐熱性を高め、融点に近い温度でも変形しにくい寸法安定性を持つPPSフィルムを創出したと発表した。
5Gに必要なFPCを構成する基板材料には、液晶ポリマー(LCP)フィルムが実用化されているが、LCPは高コストかつ加工性に課題があり、新たな素材の参入が期待されていた。
東レが注目したPPSフィルムは、優れた難燃性、耐薬品性を有しながら、LCPフィルムと同等以上の誘電特性、特に温度や湿度の影響を受けにくい優れた性質を有するが、高温域ではフィルム自体が変形しやすいことから、回路基板への加工時のはんだ耐熱性が不足していることが課題だった。
東レは、PPSフィルムの結晶構造を制御する独自技術を開発し、PPSポリマーの優れた特性を維持しつつ、耐熱性を大幅に高めることに成功。同開発品は、250℃の加熱テストでフィルムが変形しないことを確認しており、耐熱性を高めたことによって、既存の回路基板加工設備の使用が期待できるという。
また、長年蓄積してきたフィルム内の分子鎖の配向を制御する技術により、同開発品は低い厚み方向の熱膨張係数は98ppm/℃を実現している。これにより回路基板の多層化による小型化設計が可能となるなど、5G用の伝送ケーブルやアンテナなど幅広い用途展開が期待できる。
東レは、2軸延伸PPSフィルム 「トレリナ」に付与した高い熱寸法安定性とコスト競争力を活かし、5Gスマートフォンを中心としたFPC市場での採用を進めるとしている。