「発汗作用」で温度調節するハイドロゲルアクチュエータを開発

自律的に水分を蒸発させることにより、ソフトロボットのハンドの温度調節機能を果たすハイドロゲル製アクチュエータ

発汗作用で温度調節できるソフトロボットの「筋肉」が、コーネル大学とFacebook Reality Labsの共同研究チームによって考案された。指の大きさに3Dプリントされたハイドロゲル製アクチュエータが、温度変化に従って自律的に水分を蒸発させることにより、ソフトロボットの温度調節機能を果たすもので、研究成果は2020年1月29日の『Science Robotics』誌に公開されている。

機械航空宇宙工学科のRob Shepherd准教授によれば、長時間に渡って作動するロボットの製作で障害になるのが、ロボット内部の温度調節だ。動力源の高トルクモーターやエンジンが過熱すると、ロボットは作動停止へと追い込まれる。これは特に、高分子材料で構成されるソフトロボットにとって深刻な問題となる。高分子材料は柔軟性がある一方、熱を迅速に放散する金属とは異なり、熱を蓄積してしまうため、その熱管理技術が重要になる。単純なファンのような機械的冷却技術を内蔵することは、ロボット内部に空間を要するとともに、ロボットを重くするので、最適な解決策とは言い難い。

今回研究チームは、哺乳類が備える自然界の冷却システムである発汗作用にヒントを得た。発汗作用は、水分の蒸発による熱損失を利用して迅速に熱を放散し、周囲温度以下に冷却することができる。研究チームは、光造形方式の3Dプリント技術によって、発汗作用と類似の動作を行うアクチュエータを考案した。

材料とした基盤を構成するN-イソプロピルアクリルアミド重合体は、30℃以上の温度に反応して収縮し、内蔵する水分を表面層のポリアクリルアミド内に押し込む。ポリアクリルアミドには、約200μmの微細孔が連続的に配置されており、30℃以上の温度で自動的に膨張して“汗”を放散し、その蒸発熱で周囲温度を低下させる。温度が30℃以下に降下すると、微細孔は閉じられて蒸発は停止する。このように、水を蓄え温度に反応する2種類のハイドロゲル材料を用い、「スマートスポンジ」といえる指のように機能するアクチュエータを製作した。

「この温度調節技術の最大のポイントは、センサーや発汗速度を制御する部品を必要とせず、熱制御機能が材料自身に内在することだ。」と、研究チーム。このアクチュエータは、表面温度を30秒以内に21℃低下させており、人間の発汗作用よりも3倍程度効率が高い。また、ファンによる機械的な冷却よりも、約6倍も速いことも実証された。ロボットのハンドに組み込めば、ハンドを冷却するだけでなく、掴まれる物体の温度も低下させることができるという。

研究チームが指摘する開発技術の問題点の1つは、ロボットに対して水の供給が必要であることで、これは今後の研究課題となる。そして、ロボットが流体を分泌する能力は、将来的には、ロボットによる触媒反応や汚れ除去、表面保護膜などに発展させる可能性があるとの期待を明らかにしている。

関連リンク

Researchers create 3D-printed, sweating robot muscle

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