有機薄膜太陽電池の実用化技術――大面積印刷製造での課題を克服する新規高分子材料の開発

Credit: Korea Institute of Science and Technology (KIST)

韓国科学技術研究所の研究チームが、有機薄膜太陽電池(OPV)の大面積印刷製造による性能劣化要因を解明し、大面積OPVに加えて性能を向上させる新しい高分子材料を開発した。

同研究成果は2022年3月24日、「Nano Energy」誌に掲載された。

クリーンエネルギーの代表格である太陽電池、その中でも、次世代の太陽電池であるOPVは、建物の外壁やガラス窓などに印刷して貼り付けられるため、都市型太陽光発電の中核技術として注目されている。しかし、実用的なエネルギー供給が可能な数平方メートルまでセル面積を拡大した印刷製造において、性能や再現性の低下が実用化の妨げとなっている。

従来のOPV材料は、実験室での研究段階で用いられるスピンコーティング法に最適化された材料であり、高分子電子供与体と低分子電子受容体からなる。小面積では19%に達する高い変換効率を示すが、工業用の大面積連続印刷製造では、印刷用OPV材料溶液の溶媒蒸発過程で、光活性物質間の不要な凝集によりOPVの性能劣化が生じる。

研究チームは、凝集しやすい材料と相互作用し、不要な凝集による性能劣化を防ぐことができる高分子電子受容体を開発した。高分子電子供与体/低分子/高分子電子受容体の3元系光活性層を作製し、印刷製造過程において光活性層の凝集防止に成功した。さらに、3元系においてナノレベルの構造制御が可能となり、太陽電池の性能向上と太陽光発電時の光による温度上昇に対する安定性の確保が達成された。モジュール効率は14.7%を示し、従来の2元系と比較して23.5%性能が向上した。また、85℃の高温環境下でも初期効率84%以上を1000時間維持し、効率と安定性の向上が同時に実証された。

KISTのHae Jung Son教授は、「高品質で大面積の溶液処理が可能な太陽電池材料のコア原則を提案し、OPVの商用化に近づきました。今後の追跡研究を通して商用化されたOPVは、建物の外壁や自動車に簡単に適用でき、携帯電話やIoT機器の電力源として活用できる環境にやさしい自給自足の発電を可能にします」と語った。

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