全固体リチウム硫黄二次電池用正極複合体の作製に成功、理論容量に匹敵する容量を実現

豊橋技術科学大学は2020年3月11日、安価で簡便な液相プロセスを利用して硫黄活物質とカーボンナノファイバー(CNF)の複合体を作製したと発表した。このプロセスで得られる硫黄-CNF複合体を用いた全固体リチウム硫黄電池は、現行のリチウムイオン二次電池よりも高い放電容量と優れたサイクル安定性を示すという。

正極活物質としての硫黄は、現行のリチウムイオン二次電池に使用されている正極活物質と比較して5 倍以上の理論エネルギー密度を有するため、硫黄を用いた高エネルギー密度全固体電池の実現が期待されている。しかし、硫黄は絶縁体であるため、導電助剤との複合化による電子伝導パスの形成が必要不可欠だ。

そこで本研究では、溶液中で均一に複合化できる静電吸着複合法により、硫黄活物質とCNFを複合化させ、正極複合体を作製。さらに、この硫黄-CNF複合体と、これまでに液相から合成する手法を確立している Li2S-P2S5-LiI系固体電解質とLi金属負極を用いて、全固体リチウム硫黄電池を作製した。

この全固体リチウム硫黄電池は、硫黄-CNF複合体正極の理論容量に匹敵する容量を発現し、充放電サイクルを繰り返した後も高容量を維持することが確認された。今回開発したプロセスで得られる硫黄-炭素複合体には、炭素上に硫黄が薄いシート状で集積していることが確認されており、このシート状の形態ゆえに硫黄が活物質としてフルに利用されていることが推察されている。

今回の研究で活用された静電吸着法とは、母粒子と吸着させる粒子の表面電荷を高分子電荷電解質で調整することで、両者間に生じる静電相互作用により静電吸着させる手法のことだ。従来提案されてきた手法では、硫黄の理論容量とほぼ同等の高容量発現と高いサイクル安定性を示す電池は、ほとんど報告されていなかった。そこで今回の研究では、静電吸着複合法を使って硫黄-炭素複合体の作製に取り組んだ。

なお、本手法は低コストで量産化に適し、いずれ高エネルギー密度全固体リチウム硫黄電池の実用化に応用されれば、電気自動車用途、家庭/事業所用途などの大型電源用蓄電池の飛躍的な普及に貢献すると期待される。

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