赤リンから黒リンを溶液法にて高収率で合成する手法を開発――水分解の光触媒として有望 大阪市立大学と堺化学工業

赤リンからの黒リン合成と黒リン上での水素生成反応模式図

大阪市立大学は2020年3月17日、同大学の人工光合成研究センターの研究グループと堺化学工業が共同で、安全かつ無害な赤リンから黒リンを溶液法にて高収率で合成する手法を開発したと発表した。水分解での水素生成における光触媒としての実用化に向けて、黒リンの大量合成に繋がることが期待される。

黒リンは、太陽光エネルギーを用いる水分解の触媒として機能するもので、紫外光から近赤外光領域まで太陽光エネルギーの大部分を活用できる点を特長とする。光触媒材料として有望視される一方で、合成方法は高温高圧法や化学蒸着法などが一般的であり、安価で大量に合成することが困難となっている。

今回の研究では、溶媒にエチレンジアミンを用いてソルボサーマル法により赤リンから黒リンを合成した。赤リンが3価のリンとしてエチレンジアミン中に溶解し、リンがある程度集まることで0価のポリリンとなり、さらに溶液中で積層することで黒リンが形成される。得られた試料では黒リンの含有率が高く、収率は従来の約10%から約90%に大きく改善した。

また、得られた試料は、助触媒を担持することにより可視光照射下でメタノール水溶液から高い水素生成活性を示しており、水から水素を生成する際の光触媒としての可能性が実証されている。なお、担持とは、触媒として利用する金属の微粒子を担体に付着させることである。

本研究により、安全な赤リンから黒リンを高収率で得られ、黒リンを利用した光触媒研究がさらに加速すると思われる。また、黒リンの単層膜(フォスフォレン)は、黒鉛の単層膜(グラフェン)の関連物質であり、優れた導電性を示す半導体材料でもあることから、光触媒化学分野だけでなく電子材料分野でも応用展開されることが期待される。

今後、本研究で得られた黒リン合成指針を基に、黒リンの層状面積を大きくする手法の開発や、安定性が向上するような処方の開発に取り組んでいく。

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