ザイリンクスは2020年5月20日、業界初となる衛星、宇宙アプリケーション向け20nmプロセスの航空宇宙グレードFPGA「XQRKU060」を発表した。優れた放射線耐性を提供し、超広帯域幅の通信が超高スループットでできる。
XQRKU060は、業界で初めて宇宙アプリケーションに高性能機械学習(ML)機能を実装できるソリューションとなる。高柔軟なリコンフィギュレーション能力、ペイロードアプリケーションに最適な10倍以上のデジタル信号処理(DSP)性能、全軌道での優れた放射線耐性を提供する。
TensorFlowやPyTorchなどの業界標準フレームワークをサポートするさまざまなML開発ツールを搭載。宇宙でリアルタイムオンボード処理を実行するニューラルネットワーク推論を高速化できる。深層学習用に最適化された演算機能は、前世代の約25倍となるINT8でのピーク性能5.7TOPs(Tera Operations Per Second)を達成している。
業界初となる20nmの航空宇宙グレードデバイスは、65nmの航空宇宙グレードデバイスをベースに構築。大幅にサイズ、重量、消費電力を削減するとともに、堅牢な耐放射線設計が施されており、放射線耐性を持つ。
業界で初めて軌道上でリコンフィギュレーションができる他、リアルタイムオンボード処理とMLを高速化できる。衛星でリアルタイムアップデートやビデオオンデマンドの提供ができ、オンザフライで演算を実行して複雑なアルゴリズムを処理できるという。
ML機能は、宇宙や地上システムでの処理効率を向上し、決定レイテンシの短縮に役立つ。高柔軟な軌道上のリコンフィギュレーション能力が備わっており、軌道上ですでに稼働している場合と同様に、打ち上げ直前に製品をアップデートできるという。
また、電力効率の高い高密度コンピューティング用に最適化された豊富なDSP機能を搭載。UltraScale DSPスライスが2760個あり、前世代の10倍以上の性能となる最大1.6TeraMACの信号処理演算を実行でき、大幅に浮動小数点演算の効率も向上する。
40×40mmの堅牢なセラミックパッケージで提供。デバイスアーキテクチャはシングルイベント効果(SEE)を軽減する手法で設計されており、低軌道(LEO)、中軌道(MEO)、静止軌道(GEO)の全軌道、高度な探査任務に対応する。
開発ツールは、Vivado Design Suiteを使用。さらに、TMR(三重モジュール式冗長)対応のMicroBlazeソフトプロセッサを使用するエンベデッドソフトウェア開発を、Vitis統合ソフトウェアプラットフォームがサポートする。今後、ザイリンクス統合ソフトウェアプラットフォーム Vitis AIのサポートを追加予定。現在はエコシステムパートナーから、XQRKU060用の互換ソリューションが多数提供されている。
航空宇宙グレードの20nm RT Kintex UltraScale XQRKU060-1CNA1509 FPGAのフライトユニットは2020年9月上旬より、MIL-PRF-38535準拠のザイリンクス クラスB、クラスY認定デバイスとして提供を予定。メカニカルサンプルとプロトタイプユニットは提供中で、現在はKCU105評価キット、Kintex UltraScale航空宇宙グレードFPGA向け開発キットを使用してプロトタイプ作成を開始できる。