空気と電気で推進するプラズマジェットスラスターのプロトタイプを発表――航空機にも電動化の波

Credit: Jau Tang and Jun Li

武漢大学の研究チームは、航空用ジェットエンジンの電動化を前進させる新しい方法を考案した。空気を圧縮してマイクロ波でイオン化し、発生した高温高圧のプラズマを推進力に利用する。電気のみで推進し、化石燃料に依存しない旅客機につながると期待される。研究結果は、2020年5月5日付けの『AIP Advances』に掲載されている。

自動車をはじめとする陸上輸送機器は、化石燃料の使用量と温室効果ガスの排出の削減のために、電動化が進んでいる。その流れは空の旅にも及び、ジェットエンジンの電動化も検討されている。研究チームは化石燃料の代替として、固体、液体、気体に次ぐ第4の物質の状態であるプラズマに着目した。プラズマは、太陽や稲妻といった自然界にも存在するほか、人工的に生成することもできる。

研究チームは、周波数2.45GHz、最大出力1kWのマグネトロン、コンプレッサー、導波管、点火装置、石英管などを用いて、プラズマジェットスラスターのプロトタイプを作製した。導波管の大きさは600×90×50mmで、石英管と接続した部分の高さは25mmに狭めて、電界強度を高めている。マイクロ波でイオン化された圧縮空気は石英管に入り、プラズマジェットの炎となる。

宇宙探査機に搭載されている従来のプラズマジェットスラスターは、キセノンプラズマを利用している。この方式は推力が小さいので、地球では大気との摩擦の影響が大きく、航空輸送には適していない。研究チームが開発したプラズマジェットスラスターは、空気と電気だけを利用して高温高圧のプラズマを生成する。

プラズマの圧力を測定するために、石英管の上に置いた鋼球がジェットの力で振動し始める重さを調べた。その結果、毎秒流量0.5l、出力400Wの場合、約10Nの推力を生み出していた。これは、揚力にして28N/kWに相当する。マイクロ波の強度や流量を上げると、プラズマジェットの炎も明るく長くなった。石英管の開口面積を考慮に入れると、現在のジェットエンジンと同等の推進圧力に匹敵するとしている。

高出力のマイクロ波源やマイクロ波アレイを使用し、高温高圧に耐えられる材料を選べば、旅客機に適した高性能のエンジンを構成できる。このシステムには化石燃料を使用しないので、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出せず、気候変動を緩和する効果が期待できる。研究チームは、温度が装置に与える影響への対処と、評価方法の改良が課題だとしている。

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