単結晶グラファイトの層間結合力を正確に計測、従来の40GPaを超え50GPaに肉薄

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大阪大学は2020年5月29日、同大学大学院基礎工学研究科の研究グループがカネカと協力して、単結晶グラファイトの層間結合力(グラフェン層を結合するバネのバネ定数)を正確に計測することに成功し、これが従来通説とされてきた値より強い結合であることを発見したと発表した。また、この現象を理論的に説明することにも成功したという。

従来、グラファイトの層間結合力を表す弾性定数は40GPaを超えないとされてきた。このことは、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)の測定値が40GPaを超えないという実験結果が強くサポートしていた。ところが、欠陥を含む結晶では見かけの層間結合力の低下が生じている。HOPGの結晶にも多数の欠陥が存在しているが、このことはこれまで見逃されてきた。

そこで研究グループは、高配向性ポリイミド薄膜を高温で焼成し、欠陥のほとんどない極めて高品質なグラファイト結晶(単結晶)を作製した。しかし、この結晶は、直径が10μm程度、厚さがわずか1μm程度と非常に小さく、厚さ方向の結合力を計測することが難しかった。そのため、測定手法の開発に取り組んだ。


研究では、直径1μm程度のサイズに集光したレーザー光を10兆分の1秒程度だけグラファイト表面に照射し、超高周波数の音を発生させ、その音の伝播速度を正確に計測。これにより、この結晶の厚さ方向の結合力を測ることに成功した。具体的には、ピコ秒レーザー超音波スペクトロスコピー法を単結晶グラファイトに適用し、正しい弾性定数が50GPaに迫ることを明らかにした。

この手法で発生する音の波長は100nm程度で、音であるにもかかわらず可視光の波長よりも短いことから、微小試料に対しても正確に結合力を評価できる。この方法は、たたいて出る音によって良いスイカを見分ける方法に似ている。

研究グループの草部浩一准教授は今回、電子同士の距離が短いときに選択的に働く効果の一種から、バネの非調和な性質が強まることで、弾性定数が上昇することを示した。グラフェン面間が接近したときには、より強く反発する電子間相互作用の効果があり、正確な計算を適用すると今回の実験値が説明できることを解明したという。

結晶性を高めた高性能な多層グラフェンを用い、超音波計測の技術を応用すれば、測定される物質を壊さないようにしながら極めて高い感度で、たんぱく質などの生体物質を同定するセンサーを作り出すことが期待できる。今後は、この高性能な多層グラフェンの特性を生かし、生体分子に与える熱的なダメージを抑えた新しい高感度生体センサーの開発を進めていくとしている。

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