沖縄科学技術大学院大学(OIST)2020年6月4日、材料のエッジにおける曲率を変化させることで、どのようにしわを増やしたり減らしたりできるかを示したと発表した。
しわは、圧力センサー、航空機パネル、軽量宇宙船の構造である展開形のブームや望遠鏡などに悪影響を及ぼす可能性がある。しかし最近の研究では、しわが材料に有用な特性を与えられる可能性もあることを示しているという。例えば、材料を超疎水性にしたり、独自の方法で光を反射するコーティングを作製したりするときに、しわは利用できる。
研究者らは、ガラス板上で成長させた超薄ナノ結晶ダイヤモンドフィルムの作製中、不可避なしわが生じる現象に遭遇した。それは、ナノ結晶ダイヤモンドフィルムの小さな領域の下にあるガラスの層を取り除き、ダイヤモンドウィンドウを作製していた時のことだった。それ以来、しわの現象に注目した研究を進めた。
研究者によると、ナノ結晶ダイヤモンドフィルムをガラス基材の上で成長させるプロセスで、基板の加熱と冷却が行われると、2つの層が異なる量の膨張と収縮をし、応力が発生する。次に、レーザーと酸を使用してガラス基材に穴を開けると、残留応力により、基材の穴の上に張られている状態のナノ結晶ダイヤモンドフィルムが変形し、縁の周辺にしわが寄るという。
研究チームのエリオット・フリード教授は、「このダイヤモンドウィンドウが、しわができる物理的原因の一部を理解する絶好の機会だということに気がついた。直径と境界の曲率がしわに与える影響を実験的に示すため、円形のダイヤモンドウィンドウを使用し、観察した現象を説明する簡単な理論モデルも開発した」と語る。
研究者らは今回、異なるサイズのダイヤモンドウィンドウを作製し、ウインドウ部分に張られたフィルムの湾曲した縁の周辺に形成されたしわの波長と数を測定。その結果、ダイヤモンドウィンドウのサイズが大きくなる、すなわち結合して支えられているナノ結晶ダイヤモンドフィルムの境界の曲率が小さくなると、しわの密度は減少し、しわそれぞれの波長が長くなっていることを発見した。
また、ダイヤモンドウィンドウ全体のひずみレベルを測定した。従来の二次元材料全体のひずみ測定は、非常に複雑で費用がかかることから、測定の仕方には工夫を凝らしたという。具体的には、ダイヤモンドウィンドウの表面の各部分の高さを決定する手法を考案するとともに、解析のためのアルゴリズムも開発した。
次に研究者らは実験結果を使用し、理論モデルを開発した。この理論モデルは、機能的なしわや、しわの少ないデバイスの設計に使用することが期待できる。理論モデルを実験に利用したところ、負の曲率を含むデバイスでは、しわがさらに減少することが分かった。
研究チームは今後、円形ではなく、リング状のダイヤモンドウィンドウを作製することを検討するという。リング状のダイヤモンドフィルムの境界には正と負の両方の曲率が含まれており、作製は困難だが、実験を利用しつつモデルの妥当性を調べるとしている。