自動車向けに炭素繊維を低コストで製造するプロセスを開発――2Dグラフェンを添加して炭素繊維を強化

IMAGE: MARGARET KOWALIK AND ADRI VAN DUIN / PENN STATE

ペンシルバニア州立大学、バージニア大学、オークリッジ国立研究所などによる共同研究チームが、実験室での実験とコンピューターシミュレーションを組み合わせて、炭素繊維にグラフェンを添加して強度を大幅に向上させる手法を見出した。安価な自動車向け材料に応用できる可能性があり、研究成果は2020年4月24日付の『Science Advances』に掲載されている。

何十年にもわたって、軽量で丈夫な炭素繊維は航空機製造の支柱となってきた。しかし、炭素繊維は大量生産される自動車に用いるにはコストが高すぎるという課題がある。

現在市場に出回っている炭素繊維の90%は、高価なポリアクリロニトリル(PAN)から製造されている。まず、PAN繊維を200~300℃に加熱して酸化させ、次にそれを1200~1600℃に加熱して炭化させ、さらに2100℃まで加熱する必要がある。この一連の工程を経なければ、必要な強度と剛性を欠いてしまう。この膨大なエネルギーを必要とする複雑な製造プロセスが、炭素繊維の製造コストの約50%を占めている。

研究チームは、コンピューターシミュレーションと実験室での実験を組み合わせて研究を行い、製造プロセスの最初の段階で、極微量、0.075%の2Dグラフェンを添加することで、従来のPANベースの炭素繊維と比較して、強度が225%向上し、剛性が184%向上することを見出した。

研究では、さまざまな規模のコンピューターシミュレーションが実行され、それによって起こる化学反応についての知見を集めた。異なる規模の実験をつなぎ合わせることで、なぜこれらの種類の添加剤が機能するのか、原子レベルでの解析も明らかになった。2Dグラフェンの平らな構造によってPAN分子が繊維全体へ連続的に分散し、さらに、高温ではグラフェンの端が触媒機能を備えているため、残りのPANはこの端の周りに凝縮することが分かった。

研究チームは、より安価な前駆物質を用いて、コストをさらに減らすことを目指している。現在、炭素繊維の価格は重量1ポンドあたり約15ドルだが、これを5ドルにまで下げたいと考えている。さらに、現在1ポンドあたり最大900ドルという高価な炭素繊維についても、その生産コストを下げる可能性があるとしている。

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