超精密切削加工による単結晶微小光共振器、世界最高という1.4億の高Q値を達成 慶應義塾大学

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慶應義塾大学は2020年6月11日、微小光学素子を超精密切削加工のみで製作し、トップダウンで作製した単結晶微小光共振器がQ値1.4億の光学性能を達成したと発表した。この光学性能は世界最高の値だという。

微小光共振器(マイクロ光共振器)は、微小領域に光を閉じ込め、光と物質の相互作用を引き出すため、光周波数コム発生や高感度センシング、量子光学応用に用いられている。近年、くし形の光スペクトルをもつ光周波数コム光源の小型化が、マイクロ光共振器の応用として注目されている。

しかし光共振器は、高い光閉じ込め性能(Q値)を得るために適したフッ化物系結晶で作る場合、これまでのナノ加工技術を活用できないため、限られた形状の素子を研磨で作製するしかなかった。この従来の作製手法では、構造を詳細に設計できなかったり、構想の再現性が悪かったりするという課題があった。

そこで研究では、超精密機械加工を用いて、高Q値と微細構造の制御性という二つの重要な要素を両立する単結晶マイクロ共振器を製作した。

この単結晶マイクロ共振器の共振特性を測定すると、機械加工で作製されたものとしては世界最高Q値の約1.4億が得られていることが確認された。構造によって決まる分散からは、マイクロメートルオーダーで狙った通りに構造が作製できたことが確認できている。

マイクロ光共振器の性能向上には、表面散乱を減らす必要があり、表面の研磨工程は必要不可欠だった。ただし、ダイヤモンドバイトを用いた機械切削加工は表面が荒く、光が散乱しやすいので微小光学素子の作製には適さないとされてきた。

そこで研究グループは、単結晶のもつ結晶異方性や切り込み深さといった加工条件を解析し、最適化。切削加工でありながら、研磨手法に匹敵する数ナノメートルオーダーの表面荒さを達成した。

今回、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムの2種類の異なるフッ化物材料に対して共振器を作製し、そのどちらも高いQ値を得ている。測定結果は、数値シミュレーションと非常によく一致しており、初めて高Q値と構造制御性の両立に成功したことが確認できたという。

左:世界最高値を示した光共振スペクトルの測定結果(青)とそのフィッティング(赤)、右:構造再現性を確認した光共振モードの測定結果(青は実験値、赤は理論値)

本研究の成果は、高性能なフォトニクス素子を確実に作製できるため、近い将来、産業的にも大きな影響を与えることが期待できる。

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