イオン注入とアニール処理で、消去可能なシリコンフォトニクスデバイスを開発

イギリスのサウサンプトン大学の研究チームは、シリコンフォトニクスチップ上にプログラマブルな集積化スイッチングユニットを作成する技術を開発した。コストと消費電力の削減が可能で、通信システム、センシング、コンピューティングアプリケーションなど幅広い利用が期待される。研究結果は、2020年6月8日付けの『Optics Express』に掲載されている。

シリコンフォトニクスは、1つのチップ上に光回路や微小電子回路を高密度に集積できる技術で、高速で低コストのソリューションとして、幅広い分野に応用できると注目されている。Graham Reed教授率いる研究チームも長年、シリコンフォトニクス、特に、導波路、光変調器、カプラーなど多くの光デバイスの研究を続けている。

研究チームは、シリコンにゲルマニウムイオンを注入する技術を利用して、消去可能な導波路と方向性結合器を開発した。これらコンポーネントは、再構成可能な回路やスイッチの作製に使用できる。イオン注入で屈折率変化が起こり形成された導波路は、局所的なレーザーアニール処理で結晶構造を回復する。研究チームによれば、サブミクロンサイズの消去可能な導波路がシリコンに形成されるのは初めてだという。

「通常、イオン注入というとフォトニック集積回路内で大きな光学的損失を引き起こすものと考えられているが、よく検討して構造を設計し、適切なイオン注入レシピを使えば、それほど大きくない損失で光信号を運べる導波路を製造できると分かった」と、論文の筆頭著者であるXia Chen氏は語る。

導波路と方向性結合器のほか、1×4、2×2スイッチング回路の設計と製造を実施。実験では、レーザーアニールによるプログラミング前後で一貫した性能を見せていた。また、レーザーの代わりに電気ヒーターを使った局所的な電気アニールも有効だ。物理的に光導波路のルートを変えられるので、プログラム時に構成を保持するための追加の電力は必要とせず、消費電力の削減にも貢献できる。

この技術は、汎用の光回路をバルクで製造した後に、用途や仕様に応じてプログラムできるのが特長だ。そのため、チップの量産による製造コストの削減効果が期待できることから、新しい光回路の迅速な試作も可能になる。構成可能なデバイスによってシリコンフォトニクスの利用範囲が大幅に広がると同時に、コストが削減することで民生用途への展開も期待できる。

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Silicon erasable waveguides and directional couplers by germanium ion implantation for configurable photonic circuits

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