AI手法による全固体リチウム二次電池の効率的な材料探索法を実証――材料研究/開発の期間を短縮化 名工大

名古屋工業大学は2020年7月27日、AI手法を導入した材料インフォマティクスによる全固体リチウム二次電池向け材料探索の短縮化が可能なことを実証したと発表した。

同大学によると、次世代電気自動車車載電池として、安全性や性能の面から全固体リチウム二次電池の開発/実装が期待されている。そしてその商用化には、固体電解質という材料のリチウムイオン導電性能向上が必要になる。

固体電解質は、シリコン半導体と同様に異元素(ドーパント)のわずかな添加によってイオン導電性が大きく向上することが知られている。しかしその最適なドーパントの選択や添加量は、従来研究者の経験と直感による試行錯誤、および多くの実験によって求めるしかなかったため、開発期間が長期化するという課題があった。

今回の研究では、固体電解質材料(NASICON型リン酸ジルコニウムリチウム、LiZr2(PO4)3)に、ドーパントとしてカルシウム(Ca)イオンとイットリウム(Y)イオンを同時に添加して、イオン導電性と機械特性である焼結密度の向上を目指した。

上記2種類のドーパントを添加した材料47組成を実際に合成して特性を評価すると、結晶構造や焼結密度、不純物生成量、リチウムイオン導電特性の間に複雑な相関関係が存在することがわかった。これらの材料特性を踏まえて、直感や経験に基づいて最適な異元素や添加量を導き出すのは非常に困難であると考えられる。

しかしAI手法の1つ「ベイズ最適化」による選択に従ってサンプリングした結果と、実験で得られた47組成のデータを比較したところ、3分の1の実験回数でほぼ100%に近い確率で最適解を得られることが確認できた。さらに、イオン導電性と焼結密度の性能を同時に考慮しながら材料探索する「多目的最適化」が可能なことも確認できた。

カルシウムとイットリウムの添加量をさまざまに変化させた47サンプルの中から、最も高いイオン導電率を示す材料を探索する過程を示している。

今回の研究は、材料実験と材料インフォマティクスを直接的に連携させ、その有効性を明らかにした実例となる。同大学では今後、焼結温度や時間などの合成/加工プロセスに関する条件の最適化に取り組み、電池材料開発期間の短縮を含む材料研究、開発の短縮化を実現したいと考えている。

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