一方向だけに熱を伝える熱整流ダイオードを開発――熱伝導と熱制御の新手法

2枚の銅プレート間の微細な空隙における水の蒸発凝結と、水滴のブリッジ効果による再循環を利用した、熱整流ダイオードが開発された。

バージニア工科大学の研究チームが、一方向にだけ熱を伝達して、過熱の危険性のある様々な機器の熱制御を実現する、プレート型熱整流ダイオードを開発した。シールされた2枚の銅プレート間に配置された微細な空隙における、水の蒸発による気化熱冷却と、凝結した水滴のブリッジ効果による再循環プロセスを利用するもので、サーバーや産業機器など多様な熱制御用途に適用できると期待される。研究成果が、2020年8月18日の『Advanced Functional Materials』誌に公開されている。

過熱し易い産業機器やデバイスには、一般的に放熱フィンやヒートシンク、伝熱性の高い放熱材料など様々な放熱機構が施されている。機械工学科のJonathan Boreyko准教授が指導する研究チームは、気化熱冷却に活用した水蒸気を、凝結後に再循環することにより、一方向にだけ熱を伝達する熱整流ダイオードの研究を進めている。

今回開発した熱整流ダイオードは、ミクロンサイズの空隙により分離され、密封シールされた2枚の銅プレートにより構成される。1枚目のプレートは親水性で、水を保持できる細管構造を内蔵し、2枚目のプレートには疎水性の層が被覆されて撥水性を有する。熱源が細管構造を持つプレート側にある場合、細管に保持された水が熱を受取り、蒸発して気化熱冷却を生じる。水蒸気がプレート間の空隙を移動すると、疎水性プレートによって冷却されて水滴に凝結する。この水滴が空隙を“ブリッジ”するまで成長して細管構造プレートに達すると、毛細管現象によって細管に吸い込まれる。このプロセスを繰り返すことにより、蒸発と凝結の循環システムが実現し、細管構造プレート側から疎水性プレート側に熱が移動する。

一方、熱源が疎水性プレート側にある場合、細管構造を持つプレート側に保持される水は加熱されることがなく、細管構造にトラップされたままなので蒸気は発生しない。このようなメカニズムにより、熱は一方向だけにしか伝導しない。測定の結果、細管構造プレート側からの熱伝導は、逆方向と比較して約100倍大きいことが分かった。従来の熱整流ダイオードが数倍程度であるのに対して、極めて大きい。しかも水滴の“ブリッジ”効果および毛細管現象は、重力を必要としないので、縦向き、横向き、更には倒立しても用いることができ、宇宙でも作動するだろう。

「我々の水滴ブリッジ熱整流ダイオードの一方向性は、サーバーファームや航空機、宇宙船、産業機器など多様な目的に応用できる」と、Boreyko准教授は期待する。研究チームは特許を申請するとともに、開発を進めるにあたり産業界のパートナーを探している。

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