極低温を計測できる量子温度計を開発――高感度で冷却原子ガスの温度を測定する量子プロセスを記述 沖縄科学技術大学院大学

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沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2020年9月9日、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン、トリニティ・カレッジ・ダブリンとの共同研究により、極低温を計測できる量子温度計を開発したと発表した。単一の原子を温度計に見立て、高感度で冷却原子ガスの温度を測定する量子プロセスを記述したという。

室温では通常、最高秒速300~400mで1023個以上の原子が動き回っている。部屋の温度を測定する場合、温度計を使えば、すべての原子の動きを測定する必要がない。原理的には量子システム内のすべての原子の速度を測定できるが、量子温度計を使ったよりシンプルで優れた手法を設計したいと考え、極低温を計測できる量子温度計を開発した。

量子システムは宇宙に自然に存在するどんな場所よりも寒く、極小で、ガスの中には約10万個の原子しかないことから、容易に温度計で量子システムを測ることができない。仮に温度計が大きすぎたり温かすぎたりすると、測定対象のガスが加熱され、システムの量子性が破壊されるという。そこで研究では、温度計自体も非常に小さく冷たいものにするため、極冷却された単一の原子を使用した。

量子システムに特有の直感では理解しにくい性質だが、この温度計原子をシステムに加えると、温度計原子は2つの異なるエネルギー状態で同時に存在する。しかし、温度計原子が冷却原子ガスと相互作用すると、異なるエネルギー状態の重なりが崩壊する。

崩壊が起こる速度は測定中の冷却原子ガスの温度に直接関わっており、冷却原子ガスの温度は温度計原子の状態を測定することで、正確に推定できる。このプロセスは、温度計原子の量子性をガスとの相互作用で本質的に破壊し、量子システムのための温度計として完成するという。

単一原子とガスが相互作用する速度は、ガスが低温であるほど遅くなって頻度も下がり、量子性の崩壊が起こる速度は遅くなることから、温度を極低温で測定するには測定前に長時間待つ必要がある。弱い相互作用は、信号を最大化し、ノイズを最小化するために必要になる。

今回開発した手法は、測温の限界を押し広げ、量子技術の発展に貢献するという。研究チームは現在、機械学習を用いて、感度を向上するために様々な方法を探っている。

極低温世界での原子の研究において、1日の取り組みを終えた、OIST量子システム研究ユニットを主宰するトーマス・ブッシュ教授(左)と同研究ユニットのトーマス・フォガティ博士(右)

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