- 2022-8-17
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- Space Bubble, スペースデブリ, マサチューセッツ工科大学(MIT), ラグランジュ点L1, 二酸化炭素, 地球温暖化, 太陽地球工学技術, 学術, 宇宙いかだ, 気候変動
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、地球温暖化を緩和するための解決策として、宇宙空間に泡を連結した宇宙いかだ「Space Bubble」を浮かべて、太陽光の一部を遮蔽することを提案している。
二酸化炭素排出による地球温暖化と気候変動に対応するため、さまざまな対策が検討、施行されている。そして、現行の対策を補完する技術として、地球に降り注ぐ太陽放射の一部を反射または遮蔽する、太陽地球工学技術にも注目が集まっている。
太陽地球工学技術の1つに「成層圏エアロゾル注入:Stratospheric Aerosol Injection(SAI)」があるが、生態系への影響も懸念される。MITの学際的チームは、宇宙空間に目を向けることで、地球の生物圏に直接干渉することを避け、ただでさえ壊れやすい生態系を変えるリスクを減らせると考えた。
研究チームが提案する「Space Bubble」は、シリコンベースの薄膜を膨らませた「泡」をいくつも連結した構造体で、面積はブラジル国土と同等と見積もっている。打ち上げコストを削減するため、宇宙空間での製作を想定している。また、不要になった場合の廃棄も簡単で、スペースデブリも抑えられる。過去の研究結果によると、入射光を1.8%減らすと、温暖化の流れを反転できるという。
予備実験では、0.0028atmの気圧中で薄膜バブルを膨らませ、約-50℃の環境で維持できた。膜厚を変えることで、さまざまな波長に対応可能だ。泡を形成するときの粘性や界面の熱特性、太陽にさらされたときの光学特性や構造特性などを設計指標としている。
Space Bubbleの設置場所は、太陽と地球の重力が釣り合って公転周期が地球と等しくなるラグランジュ点L1(地球から約150万km)より少し太陽に近く、地球から約250万km離れたところだ。いかだが太陽の放射圧を受けることを加味した最適地点で、アクティブ制御による安定化も必要だとしている。
原料の輸送、製造、配置方法は今後の検討項目だが、例えば、物体を電磁気力で加速させるレールガンなど、新しい輸送方法についても調査する予定だ。
ただし、地球から離れているとはいえ太陽からの放射量が減るので、地球の気候に何らかの影響を与えるだろうと、いくつかの研究では示唆している。プロジェクトが中止となった場合、生態系を脅かさないためにも、段階的な廃止手法の重要性も説いている。現時点はまだコンセプト段階だが、技術的な問題が解決すれば、今世紀終わりまでには設置できるかもしれない。