複雑ネットワークと同期の基礎理論を用いた翼列フラッタの予兆検知を提唱、航空機エンジン破損の回避へ

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東京理科大学は2020年9月30日、同大学工学部機械工学科と大学院工学研究科の研究チームが宇宙航空研究開発機構と共同で、複雑ネットワークと同期の基礎理論に着目して、航空エンジンタービンで発生する翼列フラッタの予兆を検知するための独自の方法論を提案したと発表した。

翼列フラッタは、翼自体の固有振動と外力により、翼の振動振幅が急激に増幅する空力弾性不安定現象だ。航空エンジンのタービン翼の破損につながる危険性が高いことから、航空エンジン技術における重要な課題となっている。

現状では、安定作動条件に限定して運転することでフラッタ発生のリスクを回避している。また、最適形状の翼より翼の厚みや幅などを増やしたり、圧縮性能や膨張性能をやや低めに抑えたりするといった安全設計により、不安定作動による損傷を回避している。しかし、大口径で薄型の翼形状を用いることが必要となってきている今日では、設計段階でフラッタの予兆を検知できる方法論の構築が求められている。

今回の研究では、80枚の翼で構成された低圧タービンを用い、宇宙航空研究開発機構が保有する高空性能試験設備で実験を実施した。翼列フラッタが発生する振動のモードである1次のねじり振動を検知すべく、個々の翼に歪みの変動を測定するセンサーを取り付け、供試体ダクトに流入する空気の質量流量を増加させ、翼列フラッタが発生する過程を調べた。

低圧タービンの各々の翼をノードとした複雑ネットワークを構築し、翼同士の結びつきとその度合いの変化を可視化したところ、空気の質量流量の増加に伴って特定の翼がハブとして機能し、ハブとなる翼の周辺から同じ周波数で同期が起こることが判明した。ハブとなる翼と他の翼の結びつきの度合いは、空気の質量流量の増加に伴って強くなることも明らかになった。

今回の手法を用いることで、翼が集団同期状態に移行する際にハブとなる翼を抽出することができる。ネットワーク内の翼同士の結びつきの強さが、翼列フラッタの予兆を検知する上で重要な手掛かりとなる。また、同期パラメータにより翼の同期クラスタ領域の拡大を捉えられるため、翼を特定せずに翼列フラッタの発生を事前に検知することも可能となる。

今回の研究結果は、航空工学分野での非線形問題の学術的体系化や新領域開拓に寄与することが期待できる。また今後、今回の方法論と機械学習の一つであるサポートベクトルマシーンを組み合わせることで、翼列フラッタの予兆検知法のさらなる進展が見込まれる。

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